本紙の新春インタビューに、満を持して男子ゴルフの石川遼(27=CASIO)が登場だ。5年戦った米ツアーから日本ツアーに復帰した2018年シーズンは選手会長として奔走。一方、選手としては優勝がなく、不本意なシーズンとなった。本領発揮が期待されるなか、19年はどんな1年を思い描くのか? 石川が18年を振り返るとともに、新たなシーズンの抱負を大いに語った。

 ――2018年は選手会長として精力的に活動した1年だった

 石川 最初は失敗しないように、選手に迷惑をかけないように、影の薄い選手会長になるつもりだったんですが、そうはなりませんでしたね。

 ――きっかけは

 石川 就任してすぐに川淵三郎さん(82=日本サッカー協会最高顧問)から「ゴルフ界にプラスになると思うことはどんどんやるべき。正解を求めるのではなく、自分がやったほうがいいと思うことをやりなさい」と言っていただきました。これで覚悟が決まったというか、方向が180度変わりましたね。
 ――ピンフラッグの販売や土日のプロアマにつながった

 石川 僕の空想や妄想でしかなかったものが選手会事務局をはじめいろんな方が動いてもらって形になった。やろうという気持ちがあれば、できるということですね。

 ――男子は試合数を増やすことも課題だ

 石川 その前に減った原因を理解していなければ、一時的に試合が増えても、また減ってしまいます。それを知るために07年まで「サントリーオープン」を主催していたサントリーの佐治信忠会長(73)にお時間をいただきました。なぜ、男子の試合は終わって、女子の「宮里藍サントリーレディス」は続いているのか、本音を聞いてみたかったんです。

 ――どんな話を?

 石川 主催者の方にとってプロアマが大きな意味を持つというのを再認識しました。ゴルフ界の中でもプロアマは選手が主催者をおもてなしする場だと思っている人が多いんですけど、本来は主催者がビジネスパートナーなどを招待して、おもてなしをする場。プロゴルファーはそのおもてなしのツールとして価値を認められている。それが逆効果になる可能性があるとすれば、怖くて使えませんよね。

 ――意識改革が必要だ

 石川 昨今のスポーツ界を見ていると、20年前には当たり前だった光景が時代にフィットしなくなっている。ゴルフ界も同じ。選手の世代交代が進んでいるので中身も時代にフィットしていくものに変えていかないといけないと思っています。

 ――選手会長の負担は大きい

 石川 選手代表として会議などで意見を言わなければいけないし副会長ではダメな場面も多い。第一線を退いた方にやってもらうのが理想かもしれないけど、それで若手の声が届くのか? 選手会長の負担を減らすのは難しいと思います。

 ――練習時間は

 石川 球数でいえば、今まで100やっていたものが60とか70になっているのかなと思うけど、スーツを着て会議に出ている時間がマイナスとは思っていないし、言い訳にするつもりもありません。人間には環境の変化に適応していく能力がありますから。今までなら家でぼけっとテレビを見ていた時間にシャドースイングや素振りをしています。テレビゲームも好きで結構やっていたんですけど1年間全くやりませんでした。

 ――それでも昨季は苦しいシーズンではあった

 石川 開幕して6月ぐらいになってもアプローチの距離感がつかめなかった。研ぎ澄まされた感覚が全くなくて、大ざっぱなゴルフしかできない状態でした。100ヤードから1ヤード、2ヤード刻みの調整をしなければいけないのに、5ヤード刻みか、それ以上。プロとして10年やってきて、スコアがいい時と悪い時の差が分からなかったけど、自分のゴルフで大事なのは距離感なんだと分かりました。

 ――昨年8月の「RIZAP・KBCオーガスタ」では熱中症にもなった

 石川 感覚が研ぎ澄まされつつあると感じていたので棄権はせずに出続けました。結果的にはその後の試合を休むことになって、つかみ始めた感覚もなくなってしまった。(昨年で)研ぎ澄まされていると感じられたのは最終戦の「日本シリーズ(JTカップ)」だけ。例年、7試合ぐらいそう感じられる試合があるんですけどね。

 ――原因と対策は

 石川 1Wやアイアンの練習を優先して、アプローチは後回しになっていた。アプローチには申し訳ない1年でした。シーズン後半からパターで前のボールより1センチ強く打とう、5ミリ打とうという練習をしたのが全体の距離感にプラスになったと思う。来季いきなり5ミリから始めるのか、5センチぐらいからやっていくのか、どちらがいいのかはこれから考えます。

 ――その19年シーズンの目標は

 石川 最多勝ですね。(昨季賞金王の今平)周吾のゴルフを見ていると5勝ぐらいはできたと思う。そのためには毎試合トップ10に入ることが大事だし、技術的にも頭一つ抜けていないといけない。そこを目指したいと思います。

 ――賞金王になった09年は4勝で、池田勇太とともに最多勝だった

 石川 あの時は勇太さんのほうがうまいと感じていたし今もそれは変わらない。5勝するためには6~7勝するイメージでいないとできないし自分が一番うまいと思えるぐらい、抜きんでたパフォーマンスが必要と思っています。

 ――10月に米ツアーの日本開催「ZOZOチャンピオンシップ」もある

 石川 また米ツアーでプレーしたいと思っているし、そこは一つの目標。(20年には)東京五輪もありますからね。誰が五輪に出るのか、まだ確約された選手はいない。この1年で活躍した選手にチャンスがあると思うので、気合を入れて頑張ります。

☆いしかわ・りょう=1991年9月17日生まれ。埼玉県出身。5年間の米ツアー挑戦を経て、日本ツアーに復帰した2018年は選手会長に就任(任期2年)。大相撲の地方巡業にヒントを得たフューチャーツアーの開催など、新たな施策に取り組んだ。国内開幕戦の「東建ホームメイトカップ」、最終戦の「日本シリーズJTカップ」でともに2位となったが、ツアー優勝はなく、賞金ランキング22位だった。