静岡リニア、川勝知事「言行不一致」がまたも露呈 反対の根拠、「62万人の命の水」は本当なのか

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大井川源流部・田代ダムで、JR東海の説明に疑問を呈する川勝知事(筆者撮影)

静岡県がリニア沿線都府県の「建設促進期成同盟会」に加盟後、8月9日に初めて開かれたオンラインの総会で、川勝平太知事は「2027年品川―名古屋間の開業、2037年大阪までの延伸開業を目指す同盟会の立場を共有する」、「リニア整備の促進を目指してスピード感を持って課題の解決に取り組む」と表明した。沿線知事らは「早期全線開業を目指す態勢が整った」と川勝発言に期待を寄せた。

田代ダム活用は「全量戻しではない」

ところが、前日の8日、川勝知事はリニア南アルプストンネル静岡工区で最大規模の残土置き場が計画される燕沢(つばくろさわ)と東京電力の田代ダム視察で、「スピード感を持った課題解決」にはほど遠い真逆の発言をしている。懸案になっている工事中の県外流出に対して、JR東海が提案した田代ダムの東京電力の取水抑制案について、知事は「全量戻しにならない」と否定、さらに、燕沢が「深層崩壊について検討されていない。盛り土する場所にふさわしくない」などと頭から否定してしまった。

2日間の川勝発言からは、「言行不一致」の印象を多くの人に与えただけで、沿線知事の期待にもかかわらず、リニア静岡工区の着工は絶望的な状況からまったく変わっていないことが明らかとなった。

8日の視察には、県地質構造・水資源専門部会の森下祐一部会長(静岡大学客員教授)、塩坂邦雄委員(株式会社サイエンス技師長)が同行した。大井川流域の大規模崩壊地である赤崩(あかくずれ)を車中から視察、塩坂委員が「畑薙山断層帯は非常に弱い地層であり、大量の突発湧水が出る恐れがある」などと指摘した。視察終了後に、塩坂委員は、トンネル建設予定地の断層は「背斜構造となっていて力の掛かり具合が複雑であり、地下水枯渇の恐れがある」などの持論を披露、トンネル建設そのものに強い疑問を投げかけた。

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