島根・邑南町に設置されている道路標識がSNSで話題に。
「動物注意」の標識だが、描かれているのは「カエル」だ。ただ、SNSで「無慈悲で残酷だ」と声があがる、斬新すぎるデザインの道路標識になっている。実際に現地を取材した。

「カエルに注意」の標識がユーモラス

「今日は、島根の中で最もユーモラスで最も鬼畜だと思っている標識を見てきた」との文章とともにX(旧ツイッター)投稿された「動物注意の標識」の画像。

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「動物注意」の標識だが、描かれているのは「カエル」。しかも、タイヤの跡のように見えるギザギザのライン。「カエルに注意」の表記もあるが、これでは、もはや手遅れかもしれない。車にひかれた「カエル」だとすれば、確かに「ユーモラスで鬼畜な」標識だ。

広島県境の近くにある旧羽須美村と旧瑞穂町を結ぶ徳前峠近く。幅4メートルほどの道路脇に、この標識が設置されている。

SNSには実際に見に行ったという人の投稿に対し、「効果的かもしれない」、「具体的にはどうしたらいい?」など様々な反応が寄せられていた。

この標識は、いったいなぜ設置されたのか?TSKさんいん中央テレビの田中祐一朗記者が現地を取材した。

二ホンヒキガエルを守るためほかにも

邑南町役場から車で約30分。羽須美地区の山あいへ入っていく。
結構な勾配を登っていくと、例の「カエル注意」の標識が見えてきた。田中記者も思わず、「結構グロテスクですね」と声を上げた。

現在は邑南町が管理しているが、2015年までは県管理の農道だったそうだ。

「元々あそこにヒキガエルの産卵の場所があって、そこからヒキガエルが道路に出てきたりして踏んでしまわないように、カエル注意の看板を立てた」と教えてくれたのは、邑南町役場羽須美支所の三上孝志さん。

近くに「二ホンヒキガエル」の産卵場所があり、カエルが事故に遭わないよう、この標識も建てられたのだという。

「二ホンヒキガエル」は、地域によって絶滅危惧種に指定されていて、保護のため、2011年の改良工事の際に、産卵場所から5メートルほど離れたところに道路を移設。また、カエルがふ化したあと、車にひかれないよう、道路部分を約1メートルかさ上げしたそうだ。

さらに、三上さんによると、通常の側溝だとカエルが落ちてしまうと上がってこられないが、ここの側溝は側面が階段状になっているとのことで、「もしカエルが側溝に落ちてしまっても登ってこられる」とのことで、まさに“カエルに優しい道路”、至れり尽くせりの配慮だ。

カエルが帰る日を心待ちにしている

ただ、標識に込められた「カエルを守りたい」という強い気持ちと裏腹に、「ここ最近は、ここでの産卵は見られていない」と三上さんは表情を曇らせた。

しかし、取材を進めると、近くに住む男性から所有する敷地にある用水路で「おたまじゃくしがいた」と“目撃情報”が寄せられた。

「トノサマガエルやアカガエルとニホンヒキガエルのおたまじゃくしは色が違う。ヒキガエルは真黒。だから、これはヒキガエルだと、ちょっと見たらすぐわかる」と男性が続けた。

住民と町の担当者は気掛かりな様子
住民と町の担当者は気掛かりな様子

どうやらヒキガエルは産卵場所を移したようだ。
ヒキガエルは、例年なら春先が産卵時期だということだが、2024年は4月上旬の時点で、まだ確認できていないそうで、住民も町の担当者も気掛かりな様子だ。

邑南町役場の三上さんは「カエルは卵からかえったところに産卵に戻ってくるという説もあると聞いたので、おたまじゃくしがカエルになってまた戻ってくるのは、4~5年先かな」と話し、「カエルが卵からかえった場所に帰る」日を心待ちにしている。

インパクト抜群の「カエル」の標識には、「ユーモラスで最も鬼畜」なデザインとは裏腹に、生き物を守りたいという地域の人たちの温かい気持ちが込められていた。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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