同じ部活で、“自分以外全員タイムリープ”していたら…!?予想を裏切る結末に「ラスト衝撃すぎ」「ホラー」の声【作者に聞く】

「今日を繰り返しているかもしれない…！」同じ部活のメンバーが過去に戻る“タイムリープ”をしていると、そろって言い出した。けれど、その中に一人だけ「タイムリープしてない」人がいたら――？太田トオミ( @omi_103 )さんの創作漫画『オタサーの姫「以外」がタイムリープする話』は、そんなシチュエーションを描いた短編作品だ。

Twitterへの投稿には4000件を超える「いいね」とともに、「とてもおもしろいストーリー」「予想外のラスト」「なんだこの、軽そうで重い話は」と、コメディタッチと裏腹などこかビターな結末に反響が寄せられた同作。作者の太田さんに、作品の舞台裏を取材した。

「あたしタイムリープしてない…！」置いてきぼりの“姫”と部員たちに開く溝

ある日、昨日と出来事がまったく同じ一日を過ごし、タイムリープしていることに気付いた一人の漫研部員。すると、ほかの部員たちも「えっ自分も自分も！」「我輩も実はそうかな～って」と手を上げ、漫研部員が全員タイムリープしていることが発覚する。

そんな中で、唯一の女子部員だけは「あたしタイムリープしてない…！」と盛り上がりの輪に取り残されてしまう。部員からは“姫”と呼ばれ慕われる女の子は、「みんなばっか不思議な力手に入れてェー！」と失望を隠せなかった。そんな姫に、部員たちは自分たちが姫を助けたいという思いから能力が発現し、一方で筋金入りのドジっ子である姫にはやり直しの力は使いこなせないと判断されたのではないかと考察する。

それからというもの、忘れ物やケガがなくなり毎日が過ごしやすくなった姫。けれど、日を追うごとに、ほかの部員との距離が開いていくような思いを感じはじめる――、という物語。

涙の訴えでハッピーエンドと思いきや…もはや「ホラー」な結末に反響

SFの定番と言える「タイムリープ」で「取り残されてしまう」側を描いた短編。「おんなじ時間を過ごしてよ…」と、姫が涙ながらに訴えても、「姫を泣かせるとは」と、結局タイムリープしてしまう部員たちというラストには「悲しい」「ヒューマンホラーじゃねえか」「ラスト衝撃すぎる」と意表を突かれた読者のコメントが集まった。

作者の太田トオミさんは、現在は「月足透水」名義で商業誌に読み切り作品を発表する漫画家。同作も漫画賞への応募のために描いた作品だという。本作のアイデアやこだわりについて話を訊いた。

――タイムリープに一人だけ取り残されるというアイデアがユニークです。本作を描いたきっかけを教えてください。

「少年サンデーの新世代サンデー賞に応募するために描きました。もともと福地翼先生の『サイケまたしても』(小学館)というタイムリープ漫画が大好きで、その作品を読んでいるとき、タイムリープされている側の気持ちが気になったのがアイデアのきっかけです」

――タイムリープに振り回される姫ちゃんとは対象的に、漫研部員は記号的に描かれている印象です。

「この話はキャラよりタイムリープの仕掛けの方を見てほしかったので、“姫ちゃん”と“それ以外”以上のキャラは持たせないようにしました。ですので、“姫ちゃん”の本当の名前も含め、登場人物全員、名前が出てこないんです」

――また、結末には読者から驚きの声が多く寄せられていました。この結末は制作当初から想定されて描かれたのでしょうか。

「『タイムリープされる側の疎外感』がテーマなので、それを強調する形にするのがいいかなぁ、とぼんやり考えてました」

――本作を描く上で作者として挑戦した点や、振り返って気に入っている点・シーンがあれば教えてください。

「絵をそれまでで一番丁寧に描きました！お気に入りは、2ページ目一コマ目で、各部員たちがいろんな方向から飛び出して来ているところです。あと登場人物が全員漫研なので、タイムリープという事態に対しても飲み込みが早いところも気に入っています」

――太田さんは読み切りを発表するなど商業作品でも活動されています。今後の漫画制作の目標や、やりたいことを教えてください。

「現実ではあり得ないことが起こったときどんな感情が発生するのか考えることが好きなので、今後もやれたらやっていきたいです！」

取材協力：太田トオミ(@omi_103)