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2022年11月09日 07:33 更新

性教育は「自分を大事にすること」。Eテレのこども番組制作スタッフがSpotifyで取り組むトークプログラムとは

親子で「包括的性教育」を学ぶチャンス! Spotify独占配信ポッドキャスト番組『おとなのためのアイラブみー』の制作チームに話を聞きました。

3~6歳の未就学児に向けた性教育のアニメーション番組『アイラブみー』(NHK Eテレ)。そのポッドキャスト版となる『おとなのためのアイラブみー』がSpotifyで配信され反響を呼んでいます。

『アイラブみー』の大きなテーマは「包括的性教育」。番組制作に携わるNHKエデュケーショナルのプロデューサー・藤江千紘さん、Spotifyの音声コンテンツ事業統括・西ちえこさんのお二人にお話を聞きました。

(左)藤江千紘さん
NHKエデュケーショナルのプロデューサー。『おとなのためのアイラブみー』では、同じくNHKエデュケーショナルで『アイラブみー』を制作している岡崎文さんと一緒に、飾らない言葉でおしゃべりしています。4歳の男の子を育児中。
(右)西ちえこさん
Spotify 音声コンテンツ事業統括。『アイラブみー』の企画を聞いて、「是非やりたい」と感じたそう。4歳の男の子を育児中。

アニメなのに、音声だけでも刺激的に感じた

ⓒNHK

NHK Eテレで放送している番組『アイラブみー』は子ども向けのアニメーション。一方、ポッドキャストでは、Eテレの『アイラブみー』を音声のみで楽しむプログラム、子育て中のプロデューサーである藤江さんと後輩の岡崎さんが専門家に話を聞くプログラムの2種類があります。

ーーSpotifyでは音声だけでアニメーションの『アイラブみー』を配信していますが、とてもわかりやすくスッと耳に入ってきますよね。

藤江千紘さん(以下、藤江) 自宅でポッドキャスト版の『アイラブみー』を聴いていたら、子どもが近くにきて、スマホを自分の手に持ち、じっと耳をすまして聴いていたんです。音だけで聴くと没入感があるので、きっとアニメーションとは違う良さがあって、子どもの想像力を刺激して面白いのではないかと思います。みなさんも、一人で30役以上を演じわけている満島ひかりさんの声の演技をたっぷり味わっていただけたらうれしいです。

西ちえこさん(以下、西) ポッドキャスト版の『アイラブみー』の最後には、監修を務める東京大学名誉教授で教育哲学者の汐見稔幸先生、和光小学校幼稚園校園長の北山ひと美さんなどの専門家の先生方からの問いかけを入れてもらったんですよね。子どもでも大人でも、ちょっとハッとして気づきがあると思うので、ぜひ聞いていただけたら。こういう部分も、やはり教育コンテンツを長く作られてきたEテレのみなさんだからできることだと思います。

ーー藤江さんと岡崎さんが監修の汐見先生など専門家の方にお話を聞くプログラムも、音声のみだからこその気づきはありましたか?

藤江 ありました! 映像がなく声だけだと、より嘘がつけないというか、「良くも悪くも自分自身が丸ごと伝わるんだ」と感じています。私も岡崎さんも自分自身の自己肯定感が高くないこと、好きなものを好きだと言いづらいこと、子育てで驚いたことや悩んだことなど、そもそも正直に話していますが……(笑)。あとは声だけだからこそ、話し手との距離を近く感じていただけるのではないかと思っています。

西 お二人とも率直に話しているので、私自身もいちリスナーとしてすごく親近感を持ちますし、共感しながら聞いています。

ーー確かにSpotifyで声を聞いていたので初めてお会いした気がしません(笑)。お二人の掛け合いも楽しく聞いています。

藤江 私と岡崎さんはお互いに、取材をすること、それをもとに考えを深めていくことが好きなところが似ています。この番組は「結論ありき」ではなく、私と岡崎さんで日々の率直な思いを共有し、その場で監修の先生に疑問をぶつけながら、ヒントを探っていく旅のような番組なんです。感覚的な私と論理的な岡崎さんの組み合わせだからか、話が思わぬ方向に向かっていくところが、とてもいいなと思っています。他にも違うところがあって……。

ーーそれはどういうところでしょうか?

藤江 このポッドキャストを始める前に、私は親として「子どもに性教育をしたほうがいいのでは」と強く思っていたのに対し、岡崎さんは「あんまり必要だと感じたことがなかった」と言っていました。同じ未就学児の親でありながら、ちょっと違う感じ方をしている二人が配信を行うことで、気づきや発見の多いトークになりそうだと直感的に思いました。

ーーだから会話が面白いんですね。番組を重ねるごとに、お二人の関係性がより深まっているようにも思えました。

藤江 それはそう思います。毎回、専門家をまじえて、それぞれの考えを話したり会話をすることによって、今まで以上にお互いを理解し、距離も近づいてきました。自分でも配信を聴きながら実感していて、そこの変化も面白いなと思っています。

「どこに進むかわからない中で、ヒントを探している」という藤江さん

「子ども時代に知っておきたかったことが詰まっている」

ーー『おとなのためのアイラブみー』のリスナーは、どの年代が多いのでしょうか?

西 やはり子育て世代が多いですね。Spotifyは世界で4億5,600万人以上のリスナーがいるので、リスナーの年代も幅広いんです。音楽のリスナーは若い方も多いものの、ポッドキャストは20代後半〜40代が多いのでジャストですね。ポッドキャストのリスナーさんは、結構ご自身で深掘りして、調べて聴いてくださる方も多いようです。

ーー男性のリスナーさんも多いとお聞きしました。

西 はい、じつは実際に配信を始めてみると、私たちが想像していたよりも、男性のリスナーさんがすごく多かったんです。時代は変わったなと思うんですが、収録に立ち会った50代の男性スタッフが「すごく面白かった」と言っていて、どんな年代の方にも聞いてもらえると確信しました。

藤江 そうそう、『おとなのためのアイラブみー』というタイトルに惹かれて聴いてくださった30代男性のリスナーさんが「子どもの時に知っておきたかったことがいっぱい詰まっていて、今の大人の自分も、子どもの頃の自分も救われた気持ちになった」と言ってくださって、すごく嬉しかったんです。「自分を大事にするヒント」を知りたいという方は年齢や性別を問わず、潜在的にたくさんいらっしゃるのではないかと思います。

ーーEテレの『アイラブみー』を子どもと視聴している人もきっと聞いていますよね。

西 もちろん、多いと思います。NHKのEテレって、子育ての力強い味方ですよね。『アイラブみー』もすでに広く認知されている番組なので、Spotifyをご存じない方でも探して聞いてくださるだろうと思うんです。一方でストリーミングのみであまりテレビを見ない方がSpotifyの『おとなのためのアイラブみー』を聞いて、Eテレの『アイラブみー』を見てくださることもあるといいなと思います。そういった双方向の流れができるといいですよね。

「幅広い世代の方に響くコンテンツです」と西さん。

大人のモヤモヤにも効きます

ーーどんな方に聞いていただきたいですか?

西 まず、子育て中の方です! 親子で一緒に、またはお一人でも、ぜひ聞いてみていただけたら。ただ、『おとなのためのアイラブみー』はテーマが本質的で深いので、子育て中の人に限らず、「包括的性教育」や「自己肯定感」や「自分を大事にすること」について知りたいみなさまに楽しんでもらえるのではと思っています。

藤江 大人になると自己肯定感や自尊心の問題に自分でカタをつけないといけない気がするけど、「そんなこと言ってもうまくできないな」と悩んでいて、でも人に相談できないという人も多いのではないかと思います。この番組では、そういう悩みや迷いを率直に話していくので、それがリスナーさんの毎日に少しでもプラスになれば幸いです。「私も一緒だ」「どんな風に考えてもいいんだ」と思っていただけたら。

ーーポッドキャストならではのおすすめの聞き方はありますか?

西 「ながら聴き」をしやすいのが、ポッドキャスト(オンデマンド配信)のいいところだと思うんですね。通勤中、子どものお昼寝中、洗濯をしながら、洗い物をしながら……ご自身の都合のいい隙間時間に自由に楽しんでいただけると思います。コンテンツの種類も多いので、これもあれもと聞いていただくと、きっとお気に入りの番組が見つかると思います。Spotifyのレコメンデーションエンジンでは、好みに合うおすすめ番組が上がってきます。これまで能動的に探しに行かなければ見つからなかった番組に出会えると思うので、情報源や楽しみの幅を広げるツールとして使っていただけたらうれしいですね。

ーー最後に読者やリスナーに向けてメッセージをお願いします。

藤江 子どもに「自分を大切にすること」を教える方法はわかっても、「そういう教育を受けてきていない自分はどうしたらいいんだろう」とモヤモヤしている大人の方もたくさんいらっしゃると思います。私と岡崎さんも同じく悩める親であり大人なので、友達のように思って、聴いていただけたらと思っています。子育て中は、子供の世話や家事や仕事に忙しく、ご自身のことが後回しになる方も多いと思うんですけど、この番組をご自身へも目を向けるきっかけしていただけたら。ぜひ一度、聴いてみてくださいね!

西 ポッドキャスト『おとなのためのアイラブみー』、ぜひ隙間時間のおともにしてください。じつはSpotifyには『叶姉妹のファビュラスワールド』など他にも「自己肯定感」をテーマにした番組もありますし、どんどんお気に入りのプログラムを見つけてもらえたらうれしいです。さらに聞くだけでなく、配信もぜひ。スマホさえあれば、Spotifyのプラットフォームを使って誰でも配信ができるんです。自己肯定感など、なかなか人と話しづらいテーマもポッドキャストなら話し合えますし、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

(取材・構成=大西まお)

『アイラブみー』

番組HPはこちら

▼放送予定
11月15日(火)8:35~8:45(NHK・Eテレ)
「はやいのがイチバン!…じゃないの?」
(再放送:17日7:20~7:30)

着替え、洗顔、かけっこ…最近のみーはとにかく「いちばんはやい」ことにこだわる。しかし、ひーとしーは、どうやら「いちばんはやい」ことに興味がないようで…。

11月22日(火)8:35~8:45(NHK・Eテレ)
「みんなのかぞくはどんなかぞく?」
(再放送:24日7:20~7:30)

パパと二人ぐらしのみー。大家族、ママがふたりいる家族、犬とふたりぐらしの家族…様々な家族と出逢い、それぞれの良さを発見していく。

『おとなのためのアイラブみー』

https://spotify.link/NHK_iloveme
毎週火曜日18時配信


▼配信予定
・11月8日(火)
【聴くアニメ・アイラブみー(3)】「くすぐられるのが、じつはキライ?」+いっしょに考えてみよう_北山ひと美さん
ゲスト:和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美(性教育)

・11月15日(火)
トークテーマ「くすぐられるの、好きですか?って聞いたことありますか?」
ゲスト:和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美(性教育)

・11月22日
トークテーマ「壁ドンって、ときめく?ドン引き?」
ゲスト:和光小学校・和光幼稚園 北山ひと美(性教育)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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