アオモリトドマツ、種子から育て植栽加速 林野庁や県、試験研究に力

アオモリトドマツの苗木を管理する関係者=山形市・蔵王山(やまがた森林と緑の推進機構提供)

 山形市の蔵王山で樹氷を形成し、枯死被害が深刻なアオモリトドマツ林の再生に向け、林野庁山形森林管理署や県が、種子から苗木を育てる試験研究に力を入れている。稚樹の移植活動は民間にも広がり、今後、多くの苗木が必要となることが見込まれる。今年は規模を拡大して育苗を進め、将来的に稚樹の安定供給につなげたい考えだ。

 稚樹の移植は樹氷再生の一手として期待が高く、近年は民間の活動を交えながら、植栽規模を拡大させている。昨年度は山形新聞、山形放送の「みどりの学び 蔵王樹氷再生プロジェクト」での活動などを含めて66本を植え、本年度は100本まで増やす。

 現在は自生する稚樹を掘り起こし、被害が甚大なエリアに移植している。将来的には生産した苗木の活用を想定しており、移植活動と並行して現地の圃場で育苗を進めている。昨年6月には、官民一体の組織「樹氷復活県民会議」による取り組みの一環で、「やまがた森林(もり)と緑の推進機構」(山形市)などが種子約800粒をまいた。

 同推進機構によると、発芽率は約40%で、猛暑の影響で枯死した苗木もあり、昨年10月時点での生育数は281本、生存率約35%となった。大きさは3センチ程度で、担当者は「他品種に比べて成長は遅い」と分析する。例えば、ドングリは春から秋にかけて10~15センチまで成長するという。苗木として成長するまで5、6年はかかる見込みだ。

 同会議は今年、昨年の3倍となる2400粒をまく方針。現地調達だけではなく、十分な量の苗木を確保できる仕組みを構築し、植栽活動をさらに加速させる。同推進機構の安達喜代美専務理事は「大きくなった時に県民みんなで植樹できることを楽しみにしている」と期待を込めた。

種子から発芽したアオモリトドマツの苗木(やまがた森林と緑の推進機構提供)

© 株式会社山形新聞社