尹大統領(左)とバイデン大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
尹大統領(左)とバイデン大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】今月10日に就任した韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、21日にバイデン米大統領とソウルで首脳会談を行う。就任から11日にしての韓米首脳会談開催は、韓国の歴代政権で最も早い。発足したばかりの尹政権の対米関係、さらには外交・安全保障政策の行方を決定付ける場となることから、今回の会談は政権初期のビッグイベント以上の意味を持つ。

 大統領室によると、バイデン大統領は20日午後に韓国入りし、翌21日に竜山の大統領室庁舎で尹大統領と首脳会談を行う。

 韓国大統領の訪米よりも米大統領の訪韓が先になるのは、金泳三(キム・ヨンサム)政権時の1993年以来。バイデン大統領が日本で開かれる米日豪印の枠組み「クアッド」の首脳会合出席に先立つ韓国訪問を決めたことで、尹大統領の就任から2週間足らずでの韓米首脳会談が実現に至った。外交関係者らは、中国のけん制を外交・安保の最優先事項とするバイデン政権の韓国重視の基調を示すものと評価している。

 文在寅(ムン・ジェイン)前政権の後半以降、南北、米朝関係の冷え込みが続く中、北朝鮮による相次ぐミサイル発射で朝鮮半島情勢を巡る緊張は高まっている。そのため、会談では対北朝鮮での韓米の連携を改めて確認し、対応戦略を話し合うことが最優先課題に挙げられる。

 両国は特に、北朝鮮による7回目核実験の兆候を注視している。尹政権としては、他の懸案を差し置いてでも米国と対北朝鮮政策を擦り合わせることが急務となっている。

 一方、北朝鮮では新型コロナウイルスの感染が広がっている。尹大統領がワクチンをはじめとする医薬品などの提供を表明したことから、韓米は北朝鮮への人道支援の議論にも重点を置くとみられる。

 大統領室は、今回の会談を韓米同盟の立て直しの契機と捉えている。尹大統領が就任演説でも強調した自由民主主義の価値を土台に、北朝鮮問題に偏っていた韓米協力の範囲と対象を全方面に広げることで「包括的戦略同盟」へと関係を強化したい考えだ。

 尹政権は、文前政権の5年間に韓米合同軍事演習の縮小・延期、韓米拡大抑止戦略協議体(EDSCG)の中断などにより韓米関係の主軸である軍事同盟が弱体化したとみている。大統領室の関係者は15日、記者団に「両国首脳が早期に信頼関係を構築し、韓米同盟を元の軌道に戻すための基盤を築くことに(会談の)意味を置いている」と語った。

 尹大統領も1月に大統領選の外交・安保公約を発表した際、「共に民主党政権で崩れた韓米同盟を再建する」と表明し、韓米軍事演習の中止を批判していた。

 尹政権は、連合防衛態勢の強化にとどまらず、経済安保協力、ウクライナ問題など地域的・世界的懸案への寄与を通じて韓米協力の地平を広げていくと強調している。その意味で、今回の会談は米国が進める「反中」連帯に尹政権がどれほど加わるのかを推し量る場ともなりそうだ。

 尹大統領は16日に国会で行った施政方針演説で、米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通じたサプライチェーン(供給網)の協力強化をはじめ、経済安保懸案をバイデン大統領と議論する姿勢を示した。

 米国が昨年10月に提唱したIPEFはデジタル、供給網、クリーンエネルギーなどに対応するためのアジア太平洋地域の包括的な経済枠組み。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を主導し、環太平洋連携協定(TPP)への加盟を進める中国の経済的な影響力をけん制する狙いがある。特に、IPEFは半導体・バッテリーなどの分野で中国を排除した供給網を構築するとされる。

 そのIPEFに韓国が参加することは、米国主導の中国けん制戦略に歩調を合わせるという外交的な意味を持つ。それだけに、今回の会談でIPEFに関してどれだけ具体的な立場表明があるかが注目されている。


Copyright 2022YONHAPNEWS. All rights reserved. 40