近年、買い物の支払い方法として、現金ではなくクレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコードなどを使う、いわゆる「キャッシュレス決済」の存在感が高まっています。   支払い方法はさまざまですが、なぜかキャッシュレス決済の中で「PayPayのみ使用可」というお店が多いように感じられませんか? いろんな支払い方法を用意すれば、買い物客の呼び込みにも効果がありそうなのに、なぜでしょうか。   本記事では、キャッシュレス決済における導入店舗サイドの視点に立ち、キャッシュレス決済の裏側を紐解いていきます。

キャッシュレス決済はどこまで広がっているのか

まず、日本でどこまでキャッシュレス決済が浸透しているのか見てみましょう。2022年時点でのキャッシュレス決済の比率は36%、金額にして111兆円です。かなりの規模ではありますが、先進国の中では日本のキャッシュレス比率は低いです。
 
他国と比較すると、2020年のデータではアメリカでは55.8%もキャッシュレス決済が浸透しています。なお、韓国では93.6%にも上ります。
 

キャッシュレス決済が思うように広がらないのはなぜ?

消費者からすると、キャッシュレス決済は支払いが楽であり、かつサービスによっては追加でポイントも付くなど良いことずくめです。それなのにキャッシュレス決済が日本でなかなか広がらない背景には、そもそもキャッシュレス決済対応に、店舗が乗り気ではない可能性があります。その大きな2つの背景は、「手数料」と「初期費用」です。
 

キャッシュレス決済をすると店舗側は決済手数料を取られる

キャッシュレス決済を行う場合、店舗側は決済サービスを提供している事業者へ手数料を支払う必要があります。手数料はブランドや店舗の規模によって異なりますが、3%台が中心と言われています。
 
仮に3%の手数料の場合、月のクレジットカード決済による売上が300万円であれば、そのうちの9万円をクレジットカード会社に手数料として支払うことになります。
 

導入するための初期費用にも差がある

次に店舗がキャッシュレス決済の導入をするうえで気にするのは導入のハードルです。
 
クレジットカード決済の場合、専用のキャッシュレス決済端末機を設置しなければなりません。決済端末機はさまざまな企業が提供しており、初期費用として端末費用を支払うものや、初期費用は無料で月額利用制で2000〜3000円程度で提供している企業などさまざまです。
 
いずれにせよキャッシュレス決済未導入の店舗側からすると、今までかからなかったコストがかかってくるため二の足を踏んでしまうケースも考えられるでしょう。
 

PayPayなどQRコード決済の強みは、手数料と初期費用の安さ

キャッシュレス決済拡大の足かせは、決済手数料と初期費用であることが考えられますが、逆にPayPayなどQRコード決済の強みは、この2つの手頃さにあります。例えば、PayPayなどのQRコード決済が可能な店舗が増えている理由の一つが、この決済時の手数料の低さです。
 
例えばPayPayの場合、決済時の加盟店の手数料は最安で1.6%であり、クレジットカード決済の平均的な手数料と比べて約半分です。また、QRコード決済は、店舗側はスマートフォンかタブレット端末を用意すればよく、専用端末も不要であるため、店舗にとって始めるまでのハードルが低いのです。
 
クレジット決済はできないが、PayPayなどのQRコード決済のみ導入している店舗が増えている背景には、決済手数料の安さ、導入までの初期費用の低さが大きく関係していることが分かります。
 

まとめ

消費者には便利なキャッシュレス決済も、店舗側にとっては決済手数料や導入費用が悩みどころです。ただPayPayなどQRコード決済は、いずれも手頃で店舗側にも導入しやすいことが分かりました。
 
キャッシュレス決済拡大の流れは止まらないでしょうが、このままQRコードが優位に立つのか、それともクレジットカードや電子マネーがコスト問題を解決して巻き返すのか、消費者としては今後も、キャッシュレス決済の動向を注視する必要がありそうです。
 

出典

経済産業省 2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました
経済産業省 キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性
PayPay株式会社 キャッシュレス決済導入を検討中の店舗オーナー様へ
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー