ふるさと納税の福島県内59市町村への寄附額は、2023年度は過去最高となる約89億円にのぼった。そのうち、寄付額1位と2位の自治体を見てみると福島県の特色が見えてきた。一方で、自治体ごとの格差も生まれているという。

過去最高額の89億円に

寄附額は右肩上がりで増えていて、ここ10年で約17倍になった。前年度からの伸びも約1.5倍と好調だ。福島県によると、2023年10月にふるさと納税のルールが改正される前の駆け込み寄付や処理水の海洋放出を受けた「県産水産物の応援」が、好調を後押ししたと見られている。

県内1位は福島市

福島市のふるさと納税の寄附額は、4年連続で県内最高額となっている。2023年度の速報値は14億5800万円だった。
福島市の木幡市長は「マーケティングの場にもなりますので、ふるさと納税を通じてさらなる産業振興にも効果は及ぶのだろうと考えております」とふるさと納税の手応えを語った。

返礼品 人気は果物

人気の返礼品はやはり、これから次々と旬を迎えるフルーツだ。
福島市飯坂町にある紺野果樹園の紺野孝一さんも、返礼品を出品する一人。サクランボや、モモ、洋ナシなどを育てていて、現在はサクランボの早生種「紅さやか」の収穫を間近に控えている。

魅力を全国に伝えるチャンス

5年ほど前から返礼品の出品を始めた紺野さん。発送準備などでこれまでよりも作業量が増え、忙しい日々が続いているが「福島県の果物王国がより良くふるさと納税を通じて発信できれば」と話し、福島の魅力を全国に伝えるチャンスと捉えている。
サクランボは6月中旬から、モモは7月下旬から発送のピークを迎える。

県内2位はいわき市

2023年のふるさと納税の寄付額が福島県内で2番目、9億1200万円となったいわき市。メヒカリやカレイといった「常磐もの」が、返礼品として人気を集めている。

いわきで獲れた魚を、独自の製法で干した「縄文干し」を返礼品として出品する丸源水産食品。2023年9月から特に注文が増えたという。丸源水産食品・店主の佐藤幹一郎さんは「注文数は年間トータルで考えて、だいたい5倍くらい」と話す。

風評被害への応援の意味も

その背景には、2023年8月から東京電力・福島第一原発で始まった処理水の海洋放出がある。中国などが輸入停止措置をとるなか、国内でも風評被害の懸念があったが、逆に応援の気運が高まった。

ふるさと納税の注文サイトを見てみると「福島の漁業、頑張って下さい。非常に美味しかったです」というコメントが寄せられている。
丸源水産食品・佐藤店主は「今までのお客さんも含めて、頑張ってくれっていうことでお電話いただいている。やる気になるというか、この仕事をしていてよかったなって思います」という。

リピートする人も多く、いまでも月に10件ほどの注文が入っているという「縄文干し」
いわきが誇る「常磐もの」の魅力がふるさと納税を通して伝わっている。

自治体間に格差拡大への懸念

ふるさと納税は地域の魅力を全国に伝えるチャンスであり、自治体の重要な財源でもあるが、一方で懸念もある。
桃山学院大学の吉弘憲介教授は自治体間の格差が広がっていると指摘する。「自治体間で競争すれば、たくさんのお金が集まりますよと言うのは簡単だが、競争に入ること自体様々な問題を引き起こすこともある」と話す。

寄附額が14億円を超えた福島市に対し、最も少ない平田村は46万円。自治体同士で税財源の食い合いが生まれているという議論もある。

そもそもの理念である「ふるさとへの恩返し」や「応援したい地域への寄附」を実現するような制度の在り方が求められる。

(福島テレビ)