球団では13年ぶり4度目、リーグワーストに並ぶ4試合連続完封負けと、開幕早々から厳しい状況に陥った今季のカープ。

堂林翔太や野間峻祥など、打率3割以上をマークする選手もいますが、チームを開幕ダッシュに導くほどの『春男』は現れていません。4月10日の阪神戦で苦手の伊藤将司を攻略して、NPBワーストの不名誉な記録は免れましたが、苦しい状況はしばらく続きそうです。

総入れ替えで挑んだ外国人野手2人は、わずか2戦で揃って故障離脱し、西川龍馬のFA移籍による熾烈なポジション争いでレベルアップが期待された若手外野陣も、田村俊介が打率1割台と一軍の壁に苦しみ、久保修、中村奨成も無安打と結果が出ていません。

この苦しい現状を打破できる選手は存在するのか。『育成のカープ』の源泉であるファームの成績から探ってみましょう。

一軍経験のある選手で最も数字を残しているのが、今季でプロ6年目を迎える宇草孔基です。宇草はウエスタン・リーグで13試合に出場して打率.333をマーク。本塁打はゼロですが、出塁率.444と高い数字を残しています。

2021年には一軍で43試合に出場して打率.291、4本塁打、出塁率と長打率を足したOPS.764と好成績を残していますが、昨季は自身初の一軍出場なしに終わっており、巻き返しが期待されます。

複数ポジションをこなす内野手として、昨季は一軍で45試合に出場した韮澤雄也は、チームで唯一の17試合全試合出場で、ウエスタン・リーグ6位の打率.290を記録。9打点もチームトップで、本職の二遊間だけでなく昨季のクライマックスシリーズでは一塁でも起用されたユーティリティ性を武器に、一軍にもっとも近い選手と言えるかもしれません。

左の大砲候補として期待されながら、なかなか一軍に定着できない林晃汰は、4番を中心にクリーンアップの一角として、同12試合の出場で打率.271をマーク。4日のオリックス戦では右中間を破る二塁打に本塁打と、持ち味の長打力を発揮していますが、本塁打はその1本のみで4打点、長打率も.375と今ひとつ物足りない数字で、一軍へのアピールはやや欠ける印象です。

春季キャンプ直前の左膝内側半月板損傷から復帰した末包昇大は、同7試合の出場で打率.235。17打数4安打の成績ですが、4本の全ては全て単打で、昨季見せた爆発力はまだ戻っていないようです。4月中の一軍昇格を目指して調整を続けていますが、ここまでチーム本塁打がわずか1本と長打力不足が顕著なチーム状況で、数少ない一発の魅力を秘める選手として、早期の一軍復帰が期待されるところです。

オープン戦では外野争いに加わっていた中村貴浩と中村健人の同姓コンビは、貴浩が15試合出場で打率.231。チーム2位タイの6打点をマークしていますが、一軍昇格には打率アップが必須でしょう。

昨季の一軍出場なしからリベンジを誓った健人は、8試合出場で打率.227と低迷。5安打は全て単打と、今季も打撃力が一軍昇格への課題となりそうです。さらに2020年の支配下契約以降、コンスタントに一軍出場を続けている大盛穂も、13試合で打率.138と打撃不振に陥っています。

ドミニカアカデミー出身のラミレス、ロベルトが打率1割台に満たない中、育成選手としてダークホース的な存在となりつつあるのが、育成ドラフト2位入団のルーキー・佐藤啓介です。

佐藤はここまでウエスタン・リーグで13試合に出場し、規定打席には到達していませんが、31打数12安打でチームトップの打率.387を記録。1本塁打に二塁打1本、三塁打2本と長打力もあり、9四球と選球眼も良く、出塁率.525、長打力.645でOPSは10割超えと驚異的な数字を残しています。

国立大学である静岡大学出身の佐藤は左打ちの内野手で、ファームでは二塁手のレギュラー格となっています。大学時代から広角に長打を打てる打撃の評価が高い選手で、現在の好調をキープできれば、1年目からの支配下登録もありそうです。

ファームでは無双状態だった中村奨成が一軍では結果を残せなかったように、二軍の数字を鵜呑みにすることはできませんが、育成の場で結果を残した選手が、一軍の救世主になることを期待したいところです(成績は全て4月10日現在)。

文:大久保泰伸