いよいよ開幕を迎える2024SUPER GT。今シーズンは新しいマシンやドライバーが登場するという点で見どころが多いシーズンとなっているが、多くのファンや関係者の間で興味関心の的となっているのが、大幅なレギュレーション変更だ。

SUPER GTでは環境対応のロードマップ『SUPER GT Green Project 2030』を発表し、2030年にシリーズ全体のCO2排出量半減を目指すための、さまざまな取り組みがスタート。昨年からGT500クラスでカーボンニュートラルフューエルが導入され、使用するタイヤも前年比で1セット削減された。

今シーズンは、ロードマップに従って、週末で使えるドライタイヤの本数が1セットさらに削減され、300kmレースの場合は4セットとなる。加えて、導入が延期となっていたGT300クラスへのカーボンニュートラルフューエルに関しても、50%使用のものを今季から使用することとなった。

特にタイヤのセット数が変更になったことに伴い、今年から予選のルールが大幅に見直された。2023年までは2ラウンドのノックアウト方式をGT500・GT300両クラスに採用されていたが、今年からは全車Q1とQ2のタイム合算した総合タイムでスタートグリッドを決めることとなった。

開幕前の公式テストでメディア向けに行われた規則説明会で、GTアソシエイションが提示した主な変更内容は以下のとおりだ。

・GT500/300ともQ1/Q2の「タイム合算方式」
・Q1/Q2を通じて使用できるタイヤセット数を1セットに制限する。
  ※決勝スタート時は予選で使用したタイヤを使用。
・予選上位にポイントを付与する(1位3pt、2位2pt、3位1pt)
 ※予選上位ポイントやP.P.獲得回数は「ドライバー2名とも」に付与。
・予選不出走車両等はフォーメーションラップ1周目にピットイン→ピットスタートとなる。
・1セッションあたりの時間はGT500/GT300ともQ1:10分間、Q2:8分間とする。
・基準タイムはQ1/Q2とも各組上位3台平均の107%とする。
 ※基準タイムを満たしていない車両はFL1周目にピットイン→ピットスタート。
・GT300クラスに「順位入れ替え特別ルール」を適用。

まず、両クラスで共通するルールとして、Q1とQ2は同じタイヤで出走することなり、タイムアタックの担当ドライバーは各セッションで変えなければならない(従来通り事前申告)。

GT500クラスはQ1敗退という概念がなくなり、Q2も全15台が出走。Q2が終了した時点で各チーム2人合わせての総合タイムで1位〜15位が決まるという方式だ。

そのため、Q2単体のタイムではトップでなかったとしてもQ1との合算タイムでトップに立つということも十分にあり得る。今までとは違って、順位を理解する上で最初は混乱しそうではあるが、この方式はスーパー耐久シリーズでも導入されていたため、慣れてくればスムーズにいくのではないかと思われる。

一方、少し複雑になっているのがGT300クラスだ。

Q1は昨年までと同様に全体を2つのグループに分けて、A組・B組ともに上位8台ずつ(合計16台)とそれ以外の車両に分けられる。

ここからが昨年までと異なる点だ。通常なら上位16台でQ2を行なうのだが、今年からはQ1各組で9位以下になった車両もQ2に参加することとなる。詳しい振り分け方は以下の通りだ。

A組8位以上→Q2グループ1
A組9位以下→Q2グループ2

B組8位以上→Q2グループ1
B組9位以下→Q2グループ2

こうして、Q2も2グループに分けてセッションが行われ、グループ1のメンバーで1〜16位、同様にグループ2で17位以降のグリッドが決められる。つまり、Q1各組でトップ8以内に入ってQ2グループ1に進出しないと、総合タイムがどんなに良くてもポールポジションを獲得する権利はないのだ。

ただし、Q1で下位に下がったチームも上位グリッド獲得のチャンスが設けられている。それが順位入れ替え特別ルール」だ。

上記の通り、Q2を終えて各グループの順位が出たところで、グループ1の下位4台(12位〜16位)とグループ2の上位4台(17位〜20位)で、総合タイムをもとに“再シャッフル”が行われる。

先ほど説明した8台(分かりやすく表現すると12位〜20位)だけ、総合タイム順に並べ直し、総合の12番手から20番手までが決まるというものだ。

つまり、Q2のグループ2に入ったとしても、そのチームの頑張り次第では最大で12番グリッドまで進出が可能ということ。逆に言えばQ2グループ1に進出したチームも決して安泰ではなく、Q2で万が一ミスをするなどしてタイムを落とした時は最大で20番グリッドまで後退してしまうリスクがあるのだ。

まとめると……
Q2グループ1:1〜12位→そのまま順位が確定
Q2グループ1:13位〜16位→シャッフル対象
Q2グループ2:1位〜4位→シャッフル対象
Q2グループ2:5位〜→総合21番手以下で順位が確定

この辺が新予選ルールの一番複雑なところではあるが、こういうプロセスを経てGT300クラスの最終グリッドが決定することとなる。

これらを検証するために岡山と富士で行われた2回の合同テストで模擬予選を実施。公式映像のテロップも数パターン用意し、良い方向がないかを開幕直前まで模索していた。

開幕戦から、この新ルールを全て把握するのは難しいものだが、今まで以上に2人のドライバーが力をあわせ、チームの総合力が勝敗に影響する予選となることは確かだろう。

文:吉田 知弘