「エネルギーと責任感、実行力の勝利だ」

4月6日、トッテナムに4-0の快勝を収めたニューカッスルのエディ・ハウ監督は清々しい表情だった。まさしく破顔一笑。

下馬評は芳しくなかった。ジャマル・ラッセルズとスフェン・ホトマンは、前十字靭帯断裂により2025年1月まで起用できない。カラム・ウィルソン、キーラン・トリッピア、ミゲル・アルミロン、ジョエリントンのコンディションも整わず、ニューカッスルは10人もの選手が負傷者リストに名を連ねていたからだ。

対するトッテナムは、膝に違和感を抱いたリシャーリソンを除くすべての主力がスカッドに組み込まれていた。「たとえホームゲームでもニューカスルは苦戦を免れない」。メディアの見方はほぼ一致していた。

アレクサンデル・イサクが背中でイヴ・ビスマを牽制する。アンソニー・ゴードンがミッキー・ファン・デ・フェンに、ハーヴィー・バーンズはクリスティアン・ロメロにプレスをかけ続ける。

また、ジェイコブ・マーフィーがデスティニー・ウドジェに、エリオット・アンダーソンはペドロ・ポロにそれぞれ高い位置で張り付き、トッテナムのビルドアップを無効化した。いうなれば “ハイプレス・マンツーマン” だ。

さらに、ブルーノ・ギマランイスとショーン・ロングスタッフの巧みなポジショニングが、トッテナムのパスコースを潰す。ポゼッションの際は3-4-3、被ポゼッションでは5-4-1の可変にも抜かりはなく、ニューカッスルはものの見事に下馬評を覆してみせた。

この結果、ニューカッスルは6位に浮上している。5月上旬までには、長期の戦線離脱を余儀なくされているボトマンとラッセルズを除くすべての主力が復帰する予定だ。

「ジャマルがいればとか、スフェンがケガしなければとか、愚痴っていると空気が悪くなる。とにかく、前を向くしかない」

快勝に気を良くしたハウ監督も覚悟を決めたようだ。

現在、4位アストンヴィラとは13ポイント差、5位トッテナムとは10ポイント差。残り6試合というスケジュールをふまえると、逆転は難しい。ただ、なんとしてでも6位をキープし、ヨーロッパリーグの出場権だけは確保したいところだ。

今後の対戦相手はクリスタルパレス、シェフィールド・ユナイテッド、バーンリー、ブライトン、マンチェスター・ユナイテッド、ブレントフォード。最終2試合がアウェーとはいえ、トッテナム戦で見せたハイプレス・マンツーマンがさく裂すれば、ポイントをロスするリスクは低い。

ともにEL出場権を争うユナイテッドはクラブ内の不和が表面化し、エリク・テンハグ監督はいつまで経ってもけが人の多さを不振の言い訳に用いている。ウェストハムは息切れ気味だ。直近5試合のプレミアリーグで17ゴールと荒稼ぎのチェルシーは不気味だが、PKキッカーをめぐり小競り合いが起きるほど未熟でもある。

負傷者の続出が災いし、ハウ監督が理想とする並びはほとんど実現しなかった。それでも、最終盤でEL出場権獲得が現実味を帯びてきたのだから、今シーズンは及第点といって差し支えない。

“北の名門” ニューカッスル……。大団円を迎えるか。

文:粕谷秀樹