国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第11週(3/11〜17)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は0.48。今年に入り11週連続で増加しており、この1か月で報告数は約3倍になっています。RSウイルス感染症は、乳幼児・・・特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるなど、注意が必要な感染症です。

【2024年】3月に注意してほしい感染症!インフルエンザ・新型コロナ共にピークアウトの兆候も…要注意はRSウイルス感染症(https://www.youtube.com/watch?v=Y_KOE4y71GU)

大阪府が突出して報告数が多い!

都道府県別の定点当たり報告数は、大阪府1.84、奈良県1.15、北海道1.11、福井県0.96、福島県0.76、京都府0.62で多くなっています。特に大阪府は患者報告数が多く、周辺の奈良県、京都府も報告数が増えていることから、近畿地方を中心にRSウイルス感染症の流行が広がり始めています。

■感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、
「私の勤務する大阪府ではRSウイルス感染症が依然として増加していて、大阪北部では3.14、北河内では2.80となっています。2023年の大阪府のピーク時は5月の約4ですので、それに近い流行の地域もあるということです。乳幼児に重症化の可能性のあるRSウイルス感染症ですが、大阪の患者のうち約29%が1歳代ということで、重い症状のお子さんが出ることが心配です。RSウイルス感染症は、新型コロナやインフルエンザのように急激に流行が拡大することはありませんが、ゆっくりと長く流行するので、乳幼児のお子さんを持つ保護者の方は特に注意していただきたいと思います」としています。

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

乳幼児の感染には要注意!

RSは生涯にわたって感染を繰り返しますが、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

RSウイルスの感染経路は?

RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。乳幼児に関しては、周りの大人やきょうだいから感染することが多く、風邪のような症状があるときには乳幼児になるべく近づかないなどの配慮が必要です。

ヒトメタニューモウイルス感染症も増加中か?

安井医師は、勤務先の小児科医から、子どもの急性呼吸器感染症の原因となるヒトメタニューモウイルスで、医療機関を受診するお子さんの話を耳にすることが多くなったと言います。RSウイルスは生後2歳までに大半の子どもが感染すると言われていますが、ヒトメタニューモウイルスは5〜10歳までに大半の子どもが感染すると言われています。また入院を要する症状となった子どもの平均の年齢はRSウイルスが2〜3か月であるのに対し、ヒトメタニューモウイルスは6〜12か月という報告があります。
安井医師「ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスとよく似ており、呼吸器疾患を引き起こします。一般的には咳や喘鳴、発熱や鼻水など風邪のような症状が現れますが、子どもでは重症化する例もあります。また、高齢者が感染して重症化することがあり、過去には高齢者施設で集団感染が起き、多くの人が肺炎の症状を呈するということもありました。ヒトメタニューモウイルスは現在、RSウイルスのような全国的な統計調査が行われていません。一日も早くサーベイランスが確立し、流行を把握することが重要だと思います」と語っています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年11週(3/11〜17)、「COVID-19流行下の小児基幹病院における当院に入院した重症ヒトメタニューモウイルス感染症の状況」(IASR Vol. 43 p188-189: 2022年8月号)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)、
大阪府感染症発生動向調査週報(速報)2024年11週(3/11〜17)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏