まちに本屋がない「書店ゼロ」の市町村が増えている。

 本紙が4月現在の店舗数を京都府と滋賀県の各自治体に問い合わせたところ、「ゼロ」は京都の宮津や伊根、南山城など7市町村、滋賀の甲良、多賀、竜王の3町だった。単純比較できないが、取次大手の2017年調査では京都は4、滋賀は2で、空白が広がった形だ。

 気軽に立ち寄り、並ぶ本を手に取って選ぶ楽しみは書店ならではの魅力だろう。閉店を「寂しい」だけで終わらせず、地域の「知の宝庫」として、文化の発信と普及に果たしてきた役割をどうつなぐのかを考えたい。

 業界団体によると、2013年度に全国で約1万5600店あった書店は、10年間で約4600店減少した。特に小規模店舗の閉店が多い。「書店ゼロ」の市町村は全国で28%に達する。1店舗だけの「ゼロ予備軍」も増え、京都は5市町、滋賀は4市町だ。

 閉店が相次ぐ背景には、活字離れやインターネット通販、電子書籍の広がりのほか、地方の人口とにぎわいの減少など複合的な要因があろう。

 利益率の低いビジネス構造も課題である。書店は売り上げの8割を出版社や取次会社に払い、粗利益は2割程度とされる。クレジットカードや電子決済の利用者が増え、店側の手数料負担が重くしかかる。近年の光熱費や人件費の高騰も経営悪化に追い打ちをかけている。

 こうした状況に経済産業省は3月、プロジェクトチームを設置し、地域の書店に対する新たな支援を検討し始めた。書店経営者らとの意見交換で、斎藤健経産相は「ウェブ、図書館、本屋の三つが持ち味を生かしながら共存することがベスト」とした。実態に即した課題分析と具体策を求めたい。

 韓国では公共や学校の図書館が本を購入する際には、購入先として地域の書店を優先するよう勧告が出された。フランスは14年、書籍のネット通販による送料無料のサービスを禁じ、最低料金を課す法律を制定した。

 単なる業界救済とならないよう、国や自治体は目的や意義を十分に説明し、国民の理解を得ながら息の長い支援を進める必要がある。紙の本に親しむ教育の重要さは論をまたない。

 大津市在住の直木賞作家、今村翔吾さんは「文化のインフラ」として書店の重要性を訴え、経営の継承や、個人・団体が本棚を借りて「棚主」となり本を販売する「シェア型」の開店など活動を広げている。

 京滋でも取り扱う本のテーマを特化したり、夜営業をしたりと個性が光る書店が注目される。カフェや家電量販店、コンビニの併設のほか、親子向けのイベントを開くなど新業態化の動きも全国で増えている。立ち寄りたくなる書店を目指し、経営者も知恵を絞ってほしい。