体外受精などの不妊治療が公的医療の保険適用となってから4月で2年がたった。治療の選択肢が広がった一方、悩みや不安を一人で抱える人も少なくないようだ。自らも不妊治療を経験した保健師の外薗ゆかりさん(53)=鹿児島市=は「隠さず話せる社会になれば」と願い、当事者と語り合う「妊活じっくり話そう会」を始めた。

 企業などで保健師として働いていた外薗さんは31歳から治療を始めた。排卵日を予測して性交渉するタイミング法や人工授精を試したが、うまくいかなかった。「治療すれば妊娠できると思っていた。生理が来るたびに涙が出た」と振り返る。友人や親戚に子どもが生まれると、「焦りや引け目を感じてつらかった」。

 5年が過ぎた。より高額な体外受精を始めるか悩んでいると、夫が「子どもがいたらいいけど、2人でも十分楽しい。もう頑張らなくてもいい」と言った。治療から解放される喜びを感じる一方、「今から自然妊娠するかもしれない」「体外受精すれば変わるかも」と気持ちは揺れ動いた。時間を掛けて「子どもがいない人生」を受け入れた。

 「同じ不妊でも悩みや状況は一人一人違う。経験や保健師の知識を生かして、寄り添えたら」。昨秋、個人でカウンセリング事務所を立ち上げ、「話そう会」を始めた。会はあえて対象を絞った少人数制だ。

 2回目の会を5月17日午後7時から、鹿児島市のかごしま国際交流センターで開く。1人目の妊活で、不妊治療のやめ時に悩んでいる人が対象。定員は6人で、参加費500円。14日までに申し込む。



 不妊治療の保険適用拡大に併せ、鹿児島県や県内の市町村では新たな助成事業が始まった。

 県では、2004年に体外受精や顕微授精などに対する助成が始まった。21年度の申請は計2702件。保険適用の拡大を受け、23年度からは自己負担で保険診療と併用できる「先進医療」を対象にする(鹿児島市は対象外)。初年度は2月末時点で計527件の申請があった。

 鹿児島市は県と同様の助成を続けていたが、23年度からは保険適用となった不妊治療や検査の自己負担分をさらに補助する事業に変更した。鹿屋市は年齢制限のある適用治療があるため、適用と適用外の両方の治療に助成している。昨年度から先進医療分は県の補助を利用できる。担当者は「さらに治療を受けやすくなれば」と話した。

 鹿児島県内の不妊治療相談は各保健所で受け付けているほか、鹿児島市のセンターや大学病院など専門相談窓口もある。

 ◆鹿児島大学病院専門相談窓口=099(275)6839(月・金曜の午後3〜5時)、メールfunin@pref.kagoshima.lg.jp

 ◆鹿児島市不妊専門相談センター=099(216)1485(午前10〜午後5時)。助産師による面談は水曜のみで要予約。メールboshihoken@city.kagoshima.lg.jp