青森県内でタクシー運転手の減少が止まらない。県タクシー協会によると、今年3月末時点の運転手数は前年同期比4%(100人)減の2613人で、新型コロナウイルス感染拡大前の19年同期と比べると約3割(984人)も少ない。コロナ禍の乗客減に伴う収入の落ち込みを受けて離職した人員が戻りきっていないことが要因だ。昨年6月の運賃値上げやコロナ禍からの需要回復、人手不足に伴う1人当たりの売り上げ増加などを受け、運転手の給与は上がっており、業界関係者は人材確保につながることを期待している。

 県内の運転手数は19年が3597人、20年が3482人、21年が3242人、22年が2911人、23年が2713人。人口減少などを背景とした運転手不足にコロナ禍の離職が重なり、運転手の減少に拍車がかかったという。

 タクシー運転手の給与体系は歩合制のため、乗客数の落ち込みが収入減に直結する。「年金をもらったり、他の仕事をしたりしながら働いていた高齢ドライバーがコロナ禍の減収をきっかけに辞めてしまった」(平尾洋県タクシー協会専務理事)。各事業者はコロナ禍の数年、新規採用をほとんどできず、離職者の補充ができなかったという。

 運転手の高齢化も深刻で、同協会によると、県内の平均年齢は65歳程度。高齢ドライバーの離職が今後増える可能性もあり、新規採用で人材を確保できなければ、運転手の減少が続くのは必至だ。

 平尾専務理事は「祭り客の観光利用やクルーズ船寄港に伴うインバウンド(訪日客)需要などを受けて売り上げが上がり、運転手の給料もアップする。そして新たな人材が集まるという好循環が生まれることに期待したい」と語る。

▼運賃上げ効果 運転手賃金が8割でアップ

 県タクシー協会の調査によると、昨年6月の県内タクシーの運賃値上げ後、県内事業者93社の約8割で運転手の賃金が上がった。一部事業者で賃金の低さを理由とした離職者が減少、新規運転手の講習受講者が増えるなど人材確保に向けた明るい兆しが見えてきている。

 タクシーは地区ごとに運賃が設定されている。同協会は運賃改定後の昨年7〜12月に運転手の待遇改善の状況を確認。県内に営業拠点を置く93社のうち78社が、1時間当たりの賃金が上がったと回答した。売り上げの一部が運転手の取り分となるため、運賃の値上げで賃金が増えた。

 青森市の成長タクシーでは、運賃の値上げやコロナ禍からの人流回復に伴う乗客増などを受け、運転手の賃金が10%ほど上がった。

 成田康太郎社長は「需要回復に運転手数が追いついていないため、運転手1人当たりの売り上げは近年にないほどの高さ。収入の低さを理由に離職する人も減った」と説明。4月に小売業から転職した新人運転手の成田一弥さん(37)は「もともと車の運転が好きで、全国的にタクシー運転手が不足しているニュースを見て就職を決めた」と言う。

 八戸市の三八五交通でもコロナ禍前に比べ運転手の収入が増加。小笠原修社長は「賃金のアップは若手人材の確保につながる。短時間勤務の導入など子育てと両立できる職場環境の整備を進めており、女性ドライバーの採用にも力を入れていきたい」と語る。

 県タクシー協会によると、2023年の県内のタクシー運転手の平均年収は約250万円で、全産業平均(約390万円)より140万円ほど少ない。運賃改定が給与に反映される前の数値のため、24年は年収が増加する見込みだ。

 同協会は県タクシー運転者登録センターが行う新規講習の受講者が昨年から今年にかけて増加しているとし、「多少なりとも賃金水準が上がり、『タクシー運転手は稼げる』と思ってくれたのではないか」とみる。