3月28日現在、小林製薬は紅麹を使ったサプリメントを摂取した人が4人死亡したと発表している。この問題について、藤田医科大学 客員教授の今井伸二郎氏とノンフィクションライターの石戸諭氏に話を聞いた。

【映像】機能性表示食品・トクホ・医薬品…どう違う?

━━小林製薬の危機意識をどのように捉えているか?

今井伸二郎氏(以下、今井):危機意識は薄いと思う。まず、一般的に機能性食品や特定保険用食品(トクホ)において、今回のような事例は非常に少ない。過去にはアメリカで「トリプトファン事件」が起きたが、日本における死亡例は非常に少ない。そのため、こんなことが起こるとはあまり考えていなかったのだろう。

■機能性表示食品とは?

 機能性表示食品とは「事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品」であり、2015年より制度が開始されている。届出が受理されれば表示が可能である。

 対して、特定保険用食品(トクホ)は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づき認められる食品であり、国による厳正な審査がある。

━━両者の違いをどのように捉えればいいのか?

石戸諭氏(以下、石戸):やはり「トクホの審査は厳しい」と考えている企業は多い。簡単に言うと、トクホの審査は科学的根拠に基づいて国がお墨付きを与えるため、審査は厳しい。「医薬品に近い審査」という評価をする声は実際に多く聞く。薬は単に「効きます」と主張するだけでは不十分で、薬を投与する人たちと投与しない人たちと分けて検証を課すなどハードルはかなり高い。プラセボ効果ではないことを実証しなければならず、効果を謳えるかどうかを含めて国も厳しくチェックする。トクホもものによっては要件を揃えるために医薬品並みに費用も必要になる。それに比べて条件は緩いが、一定のハードルを課したものが機能性表示食品だと言える。グラデーションを設けたということだ。

今井:機能性表示食品も「届出」を出せばすぐに受理されるわけではなく、書類審査などを通して「この効果は本当なのか?」という聞き取りも当然行っている。

■安全性の確保体制は?

━━安全性を確保するために、生産・製造及び品質の管理体制の届け出を行うとのことだが、どのように審査されるのか?

今井:「どのような設備でどのように生産・製造し品質を保つか」を文書化したものを「規格」というが、もし規格が外れてしまったらどうするのか、規格の範囲であっても2重のチェックを行うのかなど、事細かに申請書に記さなければ、受理されない。

━━有害な事象が発生した場合の報告体制はどうなっているのか?

今井:医薬品の場合は義務だが、「食品」の場合は義務ではない。だが、自主的なものとして当然、責任を負う必要がある。まともな企業であれば報告をする。

━━紅麹の成分に問題がある可能性はないか?

今井:紅麹に入っているモナコリンという物質は、実は医薬品にも全く同じ構造のものがある。ただ、摂取量によってもちろん効果は異なる。医薬品であれば医者から「1日1錠です」などと教えられるが、小林製薬のサプリには目安として1日3粒と記されているものの、食品であるがゆえに中には多量に飲んでしまう人もいたかもしれない。そうなると、様々な副作用が起こってもおかしくない。

━━今後、消費者庁と厚労省はどのように動くべきか?

今井:一般的に、機能性表示食品の場合、安全性は“食経験”によって判断されてきた。つまり、普段、どのくらい食べているのかが判断基準になる。それを超えた量を摂取した場合に問題があるかについて、本来は安全性試験を行って評価するべきだが、機能性表示食品の場合はその義務がない。そのため、消費者庁や厚労省は実際にその病気を発症した人たちがどの程度の量を食べていたのかを調べる必要がある。他の機能性表示食品も調べるとのことだが、ほとんどについては安全性が担保されており、今回のような例は非常に少ないだろう。

石戸:厚労省などは原因を特定しようとしているが、本当に「原因の物質」はわかるのだろうかと思う。生産過程で何らかの形で害のある物質が混入してしまったロットが発生したのか、それとも単純に紅麹そのものの副作用だったのかなど、厳密に調べることは難しいのではないか。

今井:はっきり言って難しい。原因となった物質がある程度の量として含まれていたのであればすぐに判明しただろうが、非常に微量であるだろう。そういったものを見つけ出すことは非常に難しい。

━━我々消費者は健康を守るために何に気を付けるべきなのか?

今井:非常に難しい質問だが、製造している企業の信頼度から判断するしかないだろう。専門家ではないので難しいだろうが、宣伝を鵜呑みにするのではなく、企業のホームページなども確認し、信頼できるような書き方をしているか、きちんとしたデータを掲載しているかを見た方がいい。

石戸:健康食品の効果についてはニセ科学問題にかかわる医師など専門家も発信していて、疑問があれば「このデータは本当に正しいか」など疑問を投げかけている。「効果がありそう」で判断しても良いことはあまりない。複数の情報にアクセスすることは有益だろう。
(『ABEMAヒルズ』より)