4月29日(月・祝)有明アリーナにて「RIZIN46」が行われ、RIZINフェザー級王者・鈴木千裕が挑戦者・金原正徳と対戦。鈴木の強打がさく裂し、グラウンドのパンチによるレフェリーストップで鈴木が初防衛に成功した。

 昨年11月に敵地アゼルバイジャンに乗り込み、ヴガール・ケラモフをKOして第5代RIZINフェザー級王座に就いた鈴木。初防衛戦ではRIZINフェザー級で4連勝、直近の試合では元RIZINフェザー級王者のクレベル・コイケにも勝利している“日本格闘技界・影の番長”こと金原を迎え撃った。

 体重超過によるノーコンテスト裁定になったとはいえ、鈴木から腕十字でギブアップを奪っているクレベルに勝利していることから、金原有利の声もあった一戦だが、いざ試合が始まると鈴木が持ち前の打撃のプレッシャーと腰の強さを発揮して金原のテイクダウンを阻止。これで一気に流れを掴むと、試合後に金原も「ガードの上からでも効いた」という強烈な打撃で、最後は鈴木がレフェリーストップを呼び込み、TKO勝利という形で王座防衛に成功した。

 試合後のバックステージインタビューでも触れられていたが、鈴木のMMAにおけるメイントレーナーを務めるパラエストラ八王子の塩田歩代表は、金原のかつての師であり、金原と共に世界を目指して戦った人物だ。今回の試合に向けて鈴木陣営が警戒していたのは金原の“リズム”だった。

 クレベル戦後のインタビューで、金原は「僕はあまり対策練習はしない。当日の体調や実際に動いた時の感覚で『今日はこれがいいな』という技で攻める。僕はリズムを大切にしていて、向かい合った時に自分と相手とリズム・波長が合うか合わないか。スタートの時点で一番大事にしているのはリズムと距離感です」と話していた。

 塩田代表も「金原くんが一番上手いのは相手のリズムを盗むこと。千裕くんともそこを気を付けてやろうと話して練習を続けてきました」と金原にリズムを合わされないことを意識していたという。

 勝負の流れを引き寄せたテイクダウンディフェンスについて、塩田代表は「もともと千裕くんは四つ組みが強いんですけど、タイガ―ムエタイにも練習に行ったり、高谷(惣亮)さん(※レスリングでオリンピックに3度出場)との練習の成果でレスリングも強くなっている。自信を持ってテイクダウンを凌げた、その先の展開を作らせなかったことが大きかったです」と振り返った。

 元教え子と現在の教え子がRIZINのベルトをかけて戦う。塩田代表はこのシチュエーション、そして2人への想いをこう語っている。

「こんな大舞台で2人の試合が実現して、光栄としか言えないですね、僕は金原くんと一緒にやっていた時から世界で戦える選手を育てることを目指していて、金原くんとは試合だけじゃなくて一緒に海外にも練習に行きました。そこで培ったものを千裕くんにも同じように伝えたくて。千裕くんはもともとストライキングという武器があって、寝技の穴を埋めるためにずっとやってきて、ここまで来ました。だから感慨深いと言えば感慨深いですね。

(金原に伝えたいこと)あの年齢でRIZINに来て、フェザー級で4連勝してタイトルマッチを実現させて、若い千裕くんと真っ向勝負して、これだけ会場を盛り上げた。客観的に見ても彼は本当にすごいファイターです。僕がそれ以上、何かを言うことはできないです。

(鈴木に期待することは)千裕くんは金原くんの強さを分かっていて、そのうえで『やってやるよ!』という気持ちで、金原くんのことを恐れずに戦った。そういうメンタルの強さがあるし、だからこそ金原くん相手にも自分の試合が出来て、殴り勝てた。これから千裕くんは海外やUFCで活躍している選手の戦い方ができる選手だと思っています」

 試合後に金原は「俺に勝ったんだから、これからの格闘技界を背負ってもらわないと困る」と鈴木にエールを送り、鈴木は「今日で時代が変わったと思います。もっともっと上を目指してみんなを世界に連れて行きます」と更なる飛躍を誓った。戦いのバトンは確実に引き継がれた。

文/中村拓己
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