<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 最終日◇5日◇茨城ゴルフ倶楽部 東コース(茨城県)◇6665ヤード・パー72>

韓国の高校1年生が、日本のメジャーで衝撃的な優勝を手にした。最後の最後で主役の座に躍り出たリ・ヒョソンにとっても、「今でも信じられません。とにかくリラックスをして打とうと臨んでいました」と目を丸くするようなできごとだった。


韓国ナショナルチームのユニフォーム姿で、勝負強さを印象づけた。トータル6アンダーで迎えた最終18番。「挑戦しよう。イチかバチかでした。ボギーにもイーグルにもなる」と腹をくくって3番ウッドで打った残り235ヤードのセカンドショットを、ピン3メートルにつけた。続くイーグルパットを沈めると、スコアはトータル8アンダーに。クラブハウスリーダーとして、アテスト(スコア申告)に入った。

「イーグルを奪った後までは平常心だったんですけど、アテストに入った時に手が震えて、涙が出そうになりました」。緊張がほぐれると、急に自分がやり遂げたことへの現実味が増してくる。後続のプレーが終わって優勝が決まるまでは、練習グリーンでプレーオフに備えたが「こんな状況は初めての経験なので、プレーオフを避けたいという考えすらなかったです」。母国ではトップアマチュアだが、プロツアーでの優勝経験はなく、思考が追いつかなかったという印象だ。

練習場に行く祖父についていった9歳からゴルフを開始。今でもその祖父がコーチを務めている。憧れの選手は、元世界1位のコ・ジンヨン(韓国)。現在はそのジンヨンを指導するコーチからも手ほどきを受けている。

今回の優勝で、日本ツアーでプロ転向宣言をする権利も得た。ただ非会員のため、メジャー優勝で得られる3年間の複数年シードは適用されない。それでも手続きをし、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の理事会で承認されれば、今シーズンと来年いっぱいの試合に出場することができる可能性もある。

しかし「韓国では18歳からプロ転向が可能。その前はできないので」と、今回はこの権利を放棄することになりそうだ。それでも「3年後には、日本ツアーでも活躍できる選手になりたい」と、将来的な参戦を頭に描いている。



日本のアニメが好きで、それで日本語も学んでいるほど。特に『呪術廻戦』の大ファンだ。そばとうな重が大好物で、今週も2回ずつ食べてパワーにした。「もともと日本が大好き。ギャラリーのみなさんもすばらしいし、先輩もやさしくて楽しかったし、ぜひここでプレーしてみたい」。

さらにその先には「LPGAに出て世界ランク1位になるのが夢です」と世界の舞台も見据えている。身長は164センチで、得意クラブはウェッジ。ここは「48度、52度、58度の3本がバッグに入ってますが、そのすべてで100ヤード以内のショット精度には自信があります」と胸を張る部分だ。そのうえでドライバーの平均飛距離は250〜260ヤード。スケールの大きさも感じる。

日本ツアーでのアマチュア優勝は2019年の「富士通レディース」を制した古江彩佳以来、史上8人目。15歳176日での優勝も、勝みなみの15歳293日を抜いて最年少記録となった。最終日に逆転した『7打』は公式戦最大記録。そして、2019年に渋野日向子が同じ東コースで打ち立てた20歳178日という大会最年少優勝記録も大きく塗り替えた。

これが西コースで行われた昨年に続き、2度目の今大会出場だった。その時は21オーバーの113位という結果で予選落ちしている。あれから1年。「昨年より挑む気持ちが変わりました。その経験を土台に、攻撃にメリハリをつけることができました。成熟した姿を見せられたと思います」。記録ずくめの衝撃Vを成し遂げた後の会見では、15歳らしい初々しい笑顔が何度もこぼれた。(文・間宮輝憲)


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