今週1日まで「全米シニア」で激闘を繰り広げた“中年の星”が羽田空港に降り立った。プレーオフの末、惜敗の2位で終えた藤田寛之が帰国。50人を超える関係者や報道陣の出迎えを受け、1週間を振り返った。


「この状況は予想していなかった。日本プロの会場に急いでいかなきゃなという頭だけできたので、この状況が信じられないですね」と眼前に驚きの光景が広がっていた。出迎えには師匠の芹澤信雄も駆けつけ、顔を合わせるやいなや、固い握手を交わす。惜しくも2位で終わったとはいえ、その反響の大きさにはただただ驚くばかりだった。

『感動をありがとう!』というボードとともに迎えられたが、この言葉が感慨深い。

「(試合期間中に)徐々にSNSでいろんな応援のメッセージをいただくようになった。優勝できたらよかったですけど、残念ながら2位。でもさらに驚きだったのが、感動という言葉をいただいたこと。自分は必死にボールを打って、最後(プレーオフ)は相手を見ながらゴルフをしていただけでしたけど、そう見ていただけたんだなと思うと、プロとして一番うれしかったです」

初日に首位発進を決めると、3日目までその位置をキープ。4日目はサスペンデッドで“月曜決着”となったが、残り8ホールで3打のリードがあった。「ストローク差や状況を考えて勝てる可能性をまあまあ感じていた」というが、「トップで迎える最終日が2回も訪れてしまった」と“最終日”の5日目はプレッシャーで少し固まってしまった。力を込めたプレーは快挙にあと一歩届かなかったが、ファンからの温かいメッセージはニューポートに届いていた。

初めて海外メジャーに出場した2005年「全英オープン」から、メジャーはこれで19回目の挑戦だった。最高成績は初出場時の41位。そんななか、2年連続の出場となった全米シニアで、リチャード・ブランド(イングランド)とのプレーオフまで進んだ。

「どっちか勝った人がメジャーのタイトルを取るんだなと思うと、いままで30位以内に入ったことがない男からしたら不思議な空間でした」。惜敗に悔しさをにじませるも、「残念が最初だったけれど、ほんの30分くらい。よくよく考えたら、よくやれたんじゃないかなと思った」。そして日本から届いた“感動”や“ありがとう”の言葉たちを受け取った。「心に響いたのであればうれしいです」。銀メダルを手にしながら充実感もにじませる。

そんな思いもつかの間、あす木曜日からは日本のメジャー大会「日本プロ」に出場する。静岡地区の予選会を通過してのエントリー。月曜決着となったことで、よりタイトなスケジュールとなったが、「(欠場の考えは)全くなかったですね。予選を一緒に戦った仲間たちにも悪いし、自分が日本プロに出たくて予選から出た。こういう瞬間のために頑張っています」と、疲労を感じながらも“プロゴルファー日本一決定戦”を楽しみに見据えている。

初日は午後組でのプレー。「ふわふわした状態でプレーすることになると思う。寝られないのもあるし、気温がかなり違う。体調を崩したくないな」。日本プロの翌週は「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」の連戦を控え、そして中1週間で海外メジャー「全英シニア」のために渡英する予定だ。まずは体調を第一に、注目度がより一層増した日本プロで上位争いを目指していく。

「いつもと変わらないんです。強いアイテムを持って帰ってきたわけではないし(笑)。勘違いすればいいですけどね、できないタイプなんですよ」。どこまでも控えめな55歳は、笑顔で次の戦いの舞台へ向かった。(文・笠井あかり)


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