「こどもの日」の食べ物といえばちまきや柏餅が有名ですが、近年は「鯉のぼりケーキ」や「鯉のぼり寿司」なども多く販売されています。

そんな「こどもの日」の食べ物について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。

(今回の質問)
こどもの日に「ちまき」を食べる理由は? 「鯉のぼりケーキ」でもいいですか?

(回答)
こどもの日に食べる「ちまき」は、中国の故事に由来し、端午の節句とともに日本に伝わりました。のちに日本で生まれたのが「柏餅」です。行事の食事は伝統的な行事食だけでは成り立たないので、「鯉のぼりケーキ」でももちろんOKです。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。

■「ちまき」を食べるのは中国が由来!?
こどもの日に和菓子の「ちまき」や「柏餅」を食べるのは、端午の節句の行事食を引き継いでいるからです。それぞれに由来があるのでご紹介します。

・ちまきの由来
こどもの日に食べるちまきは、笹の葉などで餅(または、ういろうや葛)を包んだ和菓子で、中国の故事に由来します。

屈原(くつげん)という詩人であり有能な政治家が、陰謀によって失脚し、国の行く末に失望して汨羅(べきら)という川に身を投げてしまいました。人々は屈原の死を悲しみ、命日の5月5日になると供物を投げて弔いましたが、屈原のもとに届く前に悪い竜に盗まれてしまうので、竜が苦手にしている楝樹(れんじゅ)の葉でもち米を包み、邪気を払う五色(赤・青・黄・白・黒)の糸で縛ってから川へ投げたところ、無事に屈原のもとへ届くようになったという話です。

これが粽(ちまき)の始まりで、端午の節句とともに中国から伝わったので、伝統を重視する関西では、今でもちまきが主流です。

・柏餅の由来
ちまきが中国伝来なのに対し、柏餅は日本独特のもので、江戸時代に江戸で生まれました。

柏餅を包む柏は昔から神聖な木とされていたことや、新芽が出ないと古い葉が落ちないため「こどもが生まれるまでは親は死なない」、すなわち「跡継ぎが途絶えない」「子孫繁栄」に結びつき、端午の節句の縁起のいい食べ物となって、江戸を中心に広がりました。

■地域ならではの食べ物も
ちまきや柏餅のほかにも、その地域ならではの行事食があるので、いくつか紹介します。

・北海道「べこもち」
黒砂糖を使ったツートンカラーの餅菓子。ツートンカラーが、白黒まだらの牛、方言で「べこ」のようにみえるので、「べこもち」といいます。・山形「笹巻」
もち米を笹の葉でくるんでゆでたものに、きな粉や黒蜜をつけて食べるお菓子。

・長崎「鯉菓子」
鯉の滝登りに由来する鯉のぼりと同じように、鯉そっくりに作ったお菓子。

・鹿児島、宮崎、熊本「あくまき」
木灰のあく汁に浸したもち米を、竹の皮で包んで煮たものに、きな粉をつけて食べるお菓子

■「鯉のぼりケーキ」「鯉のぼり寿司」でもいい?
こどもの日のような行事では、お祝いの食事をすることも大事です。伝統的な行事食だけでは食事のメニューになりません。こどもの日はこどもが主役ですから、こどもの好きなものを加えて楽しくお祝いしてください。鯉のぼりをモチーフにした「鯉のぼりケーキ」「鯉のぼり寿司」はきっと喜ばれると思います。

また、成長が早いたけのこ料理を用意して健やかな成長を願ったり、「勝つ男」に通じる「かつお」をメニューに加えてもいいでしょう。

この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。