北陸新幹線の金沢―敦賀開業で、北陸から東京方面へは便利になったが、大阪、名古屋方面は乗り換えの不便さと、運賃が高くなったという不満の声が聞かれる。そんな中、名古屋方面の高速バスが人気だという。

 4月21日、日曜の午後1時半過ぎ、JR福井駅西口前は延伸関連のイベントでにぎわっていた。その反対側、同駅東口に高速バス乗り場がある。名古屋行きのバス停には、発車15分前ごろから続々と人が集まり始め、ほぼ満席で出発した。

 福井県坂井市から愛知県に単身赴任中の男性会社員(39)は、子どもの行事のために帰省し、戻るという。「鉄道に比べ、安いし時間もあまり変わらない」と話す。荷物も多いため、敦賀駅で10分前後かかる乗り換えも不便だという。

 ジョルダンのアプリ「乗換(のりかえ)案内」で福井―名古屋を検索すると、開業前(3月1日平日)の鉄道の最短所要時間は、特急「しらさぎ」と東海道新幹線「ひかり」の米原(滋賀県)での1回乗り換えで1時間36分、料金は6230円(いずれも通常期の指定席)、「しらさぎ」だけだと、2時間10分、料金は5810円(同)だった。

 それが、開業後(4月12日平日)は、最短で1時間33分と3分早くなったものの、北陸新幹線「つるぎ」、「しらさぎ」、「ひかり」に乗り、敦賀と米原での2回の乗り換えが必要となった。料金も8260円(通常期の指定席)と33%増えた。

 敦賀での1回乗り換えだとどうか。「つるぎ」と「しらさぎ」で2時間8分、料金は6960円(同)になる。

 一方、高速バスは道路事情にもよるが所要時間は3時間前後で、料金は3600円。2回乗り換えより約6割安く、1回乗り換えのほぼ半分だ。

 名古屋線は4社による共同運行で、その1社の福井鉄道(福井県越前市)によると、昨年12月に1日8往復を10往復に増便したという。

 同社の惣宇利(そうり)健善常務は「新幹線の開業1年前から、需要が増えると見込んで準備をしてきた」と話す。特に、所要時間差が鉄道の1回乗り換えと1時間以内なのが有利に出ているとみている。

 新幹線開業前の名古屋線の3月1〜15日の利用者は約4600人だったのが、開業後の同16〜31日は8300人と8割増。人の移動が多い時期でもあるが、前年同期と比べても4割増えたという。