高知県内企業の賃上げについて、従業員の規模による「二極化」の傾向が四銀地域経済研究所(高知市)の調査で明らかになった。離職防止などを目的に企業の賃上げの実施率は高止まりしているものの、小規模事業者では賃上げが実施できない企業も多いという。

 調査は、県内に事業所を置く255社を対象に5月に実施。172社(67・5%)から回答を得た。

 正社員の賃上げ(予定を含む)を実施した企業は86・6%で、前年より3・9ポイント低下した。

 従業員の規模別で見ると、「200人以上」の企業は実施率が100%だったのに比べ、「10人未満」は50%にとどまった。

 同時期に実施した「県内企業の景況調査」では、小規模事業者ほど円安や物価高の影響で増加したコストを販売価格に転嫁できずに利益が減少している状況が浮き彫りになったという。

 同研究所は「規模が小さく売り上げが少ない会社ほど給与に転嫁する余裕がない」と分析している。

 非正規社員の賃上げ(予定を含む)を実施した企業は60・9%で、前年より2・8ポイント低下した。コロナ禍で離職者が多かったサービス業では採用を強化する動きが顕著で、前年比6ポイント増の72・7%で実施した。

 従業員の規模別では「200人以上」の実施率が80%だったのに比べ、「10人以上49人以下」と「10人未満」では5割程度にとどまった。

 西本治史代表は「各企業が厳しい経営のなかでも人材確保や離職防止のため賃上げに踏み切っており、実施率は高止まりしている。ただし、売り上げが少ない小規模事業者ほど給与に転嫁できない状況が続いており、二極化の傾向はしばらく続くだろう」と話している。(羽賀和紀)