新潟水俣病の被害を訴える原告が、水俣病被害者救済法(特措法)の救済を受けられなかったとして、国や旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、新潟地裁であった。島村典男裁判長(鈴木雄輔裁判長代読)は、新たに26人を水俣病と認め、旧昭和電工に計約1億円の賠償を命じた。国への賠償請求は退けた。

 同種訴訟は全国4地裁に起こされ、判決は3件目。大阪地裁は昨年9月、原告全員を水俣病と認めて国などに賠償を命じたが、熊本地裁は今年3月、一部を水俣病と認めつつ、賠償請求を棄却し、判断が分かれた。

 新潟水俣病は1965年に公式確認された。公害健康被害補償法に基づく認定患者は今年3月末時点で716人いる。95年の「政治決着」で約800人に一時金260万円などが支払われ、2009年施行の特措法に基づき、症状がある約2千人に一時金210万円などが支払われた。期限までに申請できなかったり、対象から漏れたりした原告らが提訴した。

 新潟地裁判決は、水俣病と認めるには、阿賀野川の魚を多く食べた人で、主に公的な検診記録に基づき、水俣病に特徴的な感覚障害などが確認できる必要があると指摘。患者認定を受けていない原告45人のうち、26人を新たに水俣病と認めた。

 その上で、水俣病になったと認識していなかったり、差別や偏見のために請求をためらったりした原告に対し、法律関係を速やかに確定させるため、不法行為から20年がたつと賠償請求権がなくなる「除斥期間」をそのまま適用することは「正義・公平の理念に反する」と指摘。メチル水銀を含む排水を流出させ、水俣病を発生させた旧昭和電工に原告1人あたり400万円の支払いを命じた。

 一方、国は水銀の排出や、それに伴う健康被害の発生を具体的に予見できなかったとし、規制権限を行使しなかったことに違法性はないとした。(森下裕介)

 新潟水俣病 新潟県の阿賀野川流域で、旧昭和電工鹿瀬工場がメチル水銀を含む排水を流したのが原因で発生したとされる。汚染された魚介類を食べた人たちに手足のしびれや感覚障害、運動機能低下などの症状が出た。1965年5月、公式に確認された。74年施行の公害健康被害補償法に基づく認定患者数は今年3月末時点で716人。水俣病や四日市ぜんそく、イタイイタイ病と共に「四大公害病」と呼ばれる。