デビュー作「成瀬は天下を取りにいく」が第21回本屋大賞に輝いた宮島未奈さんが18日、滋賀県庁と大津市役所を表敬訪問し、受賞の喜びを語った。大津市在住の宮島さんは「ここはホーム」と安心した表情で、「滋賀のみなさんがとても応援してくれていると感じている」と感謝した。

 宮島さんは県公館で三日月大造知事と面会した。「この(受賞)トロフィーを持って滋賀に帰って参りました」とあいさつすると、集まった県職員や関係者から大きな拍手が湧いた。

■宮島さん「みんなが成瀬を育ててくれた」

 受賞作は大津市を舞台に、地元愛あふれる主人公の成瀬あかりが中学から高校にかけて、マイペースを貫いて生きる姿を描いた。宮島さんは「ローカルな話が全国でも評価され、受賞するとは思っていなかった。地元では『読んだよ』『おめでとう』と声をかけてくれる。みなさんが成瀬あかりを育ててくれた」と話した。

 三日月知事は「本屋大賞は、書店員に選ばれる賞。とても価値がある」とたたえた。この作品が書店の店頭でいつも山積みになっていることに触れ、「書店文化を盛り上げてくれていることにも感謝している」。

 宮島さんは「滋賀愛」についても語った。報道陣の取材に対し、「これまでインタビューでは『滋賀愛がすごいのは私ではなく、成瀬だ』と言ってきた。滋賀愛があったからこの作品を書いたのではないが、書いた結果、滋賀のみなさんに受け入れられ、私の滋賀への愛着も深まった」と話した。

 県が実施しているゆかりの地をめぐるスタンプラリーには自らも参加し、「クリアした2人目です」。

 続編の「成瀬は信じた道をいく」とあわせて63万部を突破した。大学生になった「成瀬」の新作が「小説新潮」の来月号に掲載される予定。「成瀬の物語」はこの3作目でいったん休むという。「でも、成瀬はきっと帰ってくると思う」

■市役所にはびわ湖大津観光大使も

 大津市役所では、佐藤健司市長や続編にも登場するびわ湖大津観光大使らが宮島さんを迎えた。

 小説には、2020年に閉店した百貨店「西武大津店」のほか、観光船「ミシガン」や近江神宮など市内の観光スポットが登場する。

 受賞後に市内を歩いていたら「おめでとうございます」と声をかけられるといい、「大津の皆さんがとても喜んで下さっている」と宮島さん。「当たり前のようにあることが特別に見える小説なのかもしれない。読んでいない市民にも読んで頂きたい」と話した。