愛媛、高知両県と大分県の間にある豊後水道を震源とする地震で17日深夜、四国各地は大きな揺れに見舞われた。特に愛媛県愛南町、高知県宿毛市で震度6弱を観測するなどして、住民らは不安な夜を過ごし、行政は被害状況の把握に追われた。

 愛媛県内では、松山市で3人、宇和島市で2人、大洲、東温の両市で各1人の計7人が軽いけがを負った。高知県でも、顔の骨を折るなど重傷の2人と軽いけがの1人が確認された。

 強い揺れが観測された地域では、インフラへの影響もあった。

■水道の濁りや道路の通行止めも

 震度6弱が観測された高知県宿毛市や隣接する四万十市の一部では、地震直後から水道水が茶色く濁る状況が続いた。宿毛市水道課によると、市内の給水世帯は約1万5千世帯。このうち約6割に配水する施設のそばで濁りが発生しているという。担当者は「飲んでも体に影響はないとされているが、当面控えてほしい」と呼びかけている。国(国土交通省四国地方整備局)は市役所に出動させた散水車で給水活動をした。

 愛媛県では、国道や県道で通行止めが発生した。同県大洲市を通る国道197号では、落石が原因で通行止めに。松野町の県道も通行止めとなり、復旧作業が進められている。宇和島市では国道沿いの建物に亀裂が入り、倒壊の恐れがあるとして歩道部分が通行止めになった。

 また、「石垣の里」と呼ばれ、美しい景観で知られる同県愛南町の外泊(そとどまり)地区では、10カ所ほどで石垣が崩れた。

 今回の地震では、徳島県内で震度1〜3、香川県内でも震度2〜3が確認されたが、両県とも特段の被害はなかった。

■震度6弱 四国では初観測

 気象庁によると、現在の震度階級が導入された1996年以降、震度6弱以上の地震が四国で観測されたのは、今回が初めてだった。住民からは驚きの声が上がった。

 震度6弱の地震が観測された高知県宿毛市中央1丁目、浅山俊員(としかず)さん(90)の自宅では、一夜明けた18日午後、壊れた屋根に業者がブルーシートをかけていた。

 2階建ての離れで屋根瓦が落ち、水道管や蛇口の接続部分が外れて室内が水浸しになったという。台所は積み上げていた荷物が散乱し、足を踏み入れることもできない状態だった。

 妻の幸子さん(88)は「屋根や水道の修理に300万円以上かかると業者に言われた。この年になって、そんなお金がかかるなんて」と肩を落とした。

 同市では水道水の濁りが発生した。市役所前に設置された給水車から持参の容器に水の提供を受けた山下美千代さん(64)は、トイレの水が茶色く濁っていることで異変に気づいたという。流し台の水も濁っているといい、「野菜を洗ったりお米をといだりするには不安だった」と話した。

 同じく震度6弱を記録した愛媛県愛南町にある天満神社周辺では、地震で倒れたとみられる石灯籠(どうろう)が少なくとも2基、確認された。

 様子を見に来た近所の和泉勲さん(84)は「灯籠が倒れたことなんて今までなかった。こんなに大きな地震は久しぶりだ」と話した。

 最大震度5強が観測された宇和島市の繁華街では18日、飲食店経営者が片付けに追われた。

 同市新町1丁目で小料理「すずらん」を営む上田ちさ子さん(75)は、営業を終えて友人の店にいた時に地震に見舞われた。

 急いで自分の店に帰ると、2階の部屋から水が漏れ出し、床中水浸しになっていた。焼酎のボトルやグラスなどが棚から落ちて、床に散乱していたという。

 上田さんは「今までも小さな地震はあったけど、こんなに大きな地震はなかった。長い揺れだったし、余震もあって、びっくり。ケガがなくて本当に良かった」と話していた。(羽賀和紀、土居恭子、戸田拓、内海日和)