気管切開術に伴う器具の事故で、低酸素脳症を発症した女児(当時6カ月)が死亡したのは、病院側の説明不足などが原因だとして、病院を運営する愛知県一宮市に対し、遺族が約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が18日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長は、遺族側の請求を棄却した一審・名古屋地裁判決を変更し、市に約7400万円の賠償を命じた。

 判決によると、女児は持病のため気管切開術を受け、人工呼吸器が必要な状態だった。2018年8月に一宮市立市民病院を退院したが、翌日に自宅で気管から呼吸をするための器具(カニューレ)が閉塞(へいそく)する事故が発生。低酸素脳症を発症し、意識が戻らないまま21年に死亡した。

 一審判決は、病院側に過失責任はないとしていた。

 一方、二審判決は、約3週間の入院中、女児にカニューレの閉塞事故が3回もあった点を問題視。退院後も事故が起きうることを予見できたのに、入院中の事故や在宅時に事故が起きた時の対処法など、病院側が家族に必要な説明・指導を怠った、と指摘。この過失が事故や死亡につながったと結論づけた。

 女児の父親は代理人弁護士を通じ、「病院の責任を認めて頂いて、娘の無念を晴らせたことでほっとしました」などとコメントした。一宮市は「判決文が届いていないので、現時点ではコメントを差し控える」とした。(高橋俊成)