新型コロナウイルスのワクチン接種を全額公費でまかなう「特例臨時接種」が3月末で終わり、国から自治体へワクチン保管用に無償譲渡された冷凍庫も役目を終えた。マイナス60〜85度の超低温を保てる特殊な機種が含まれており、家庭用には向かない。自治体は譲り先や売却先を探すなど、一斉に処分に動き出した。

 埼玉県白岡市保健福祉総合センター「はぴすしらおか」の廊下に9日、4台の冷凍庫がズラリと並んだ。接種を担う市内の医療機関に置かれていたが、この日、市の担当者が回収してきた。

 センター内の別の場所などにある3台と合わせ、計7台が2021年度に国から譲渡された。健康増進課によると、3月までに接種を受けた市民は延べ約19万5千人。市外で接種を受けた人が一部含まれているが、ほとんどの人たちはこれらの冷凍庫で保管されていたワクチンを接種された。

 特例臨時接種の終了を前にした昨年12月、厚生労働省は全国の自治体に事務連絡を出した。冷凍庫の譲渡や売却などでの有効活用を求めつつ、廃棄も認める内容だった。

 市はこれを受けて、医療機関に打診したり、4月初めからホームページで引き取り先を募ったりした。その結果、冷凍庫を置いていた医療機関が1台をそのまま引き取るほか、市の農産物販売施設「しらおか味彩センター」の指定管理者や県外の動物病院などに5台を譲ることに。残り1台は、災害時の医薬品保管を念頭に市が引き続き保有する。

 大瀧明志・市健康増進課長は「無事に有効活用してくれる先が見つかり、ほっとした」と胸をなで下ろした。

 厚労省によると、ファイザー社のワクチン向けの超低温冷凍庫9900台、モデルナ社のワクチン向けの低温冷凍庫1万2千台を計90億円余りで調達した。全国の自治体の希望に応じて計約1万4700台を無償譲渡したほか、国が7千台余りを保有して職域接種をする企業などに貸した。耐用年数は6〜10年程度。同省も国保有分の処分方法を検討している。

 県のまとめでは、県内63市町村のうち、横瀬町を除く62市町村と県に、計788台が無償譲渡された。最も多かったのはさいたま市の108台。川越市45台、川口市39台と続いた。

 さいたま市は、ワクチンの配送を委託した業者の倉庫に108台をまとめて置かせてもらっていた。2月に業者から見積もりを取り、川口市の中古機器業者に約58万円で売却することを決めた。4月早々に引き渡した。

 県は譲渡された13台のうち1台を県衛生研究所で活用するが、12台は引き取り先が見つからず、すでに14万円余りかけて廃棄したという。8台使っていた八潮市は、市内外の研究機関や医療機関に無償譲渡する。4月中に引き渡す予定。

 蓮田市は3月、ホームページで譲渡された6台の引き取り先を募った。21件の応募があり、市内の医療機関2施設に1台ずつ、県内の大学2校に2台ずつ譲ることにした。

 市によると、6台中2台は一度も使わなかった。当初4台で対応していたが、故障した場合に備えて、追加で確保したのだという。担当者は「無事に接種をするために必要だったと考えている」と説明する。

 さいたま市でも108台のうち数台を使わなかったという。

 厚労省予防接種課は「当初、冷凍庫が壊れてワクチンが使えなくなり問題になった例があったので、貴重なワクチンを大事に使うため、自治体の工夫で予備を確保したとしても、否定的にとらえていない」としている。(佐藤純)