能登半島地震の直後からスマホにつづった日記を、石川県珠洲市の女性が自主制作の冊子(ZINE(ジン))にまとめ、発売した。地震からの5日間を、A5判、35ページの「地震日記」にとじ込んだ。

 鹿野桃香さん(30)は、2017年に埼玉県から同市に移住。7年間、奥能登国際芸術祭の運営に携わった。

 元日、大きな揺れで大きく壊れた自宅から、近くの高台へ避難した。車中泊で迎えた夜、スマホに「地震日記」のメモを作り、被災後の出来事を淡々と打ち込んだのが、始まりだった。

 それから1月末まで、毎日日記を書いた。日々の出来事や感情を赤裸々につづったのは、被災後の非日常を乗り越えるため、自分のためだった。

 被災直後から5日間の日記を、ZINEにしようと決めたのは3月。「親しい友人への手紙感覚」で、直接聞きにくいことを本の形で伝えるためだった。当初は友人だけに公開する想定だったが、個人の記録を扱う小書店との出会いから、広く読んでもらおうと一般発売を決めた。

 鹿野さんは「もっとひどい経験をした人もいるが、それだけが地震ではない。個人の視点で書かれた記録を通し、震災に初めて寄り添える人もいると思う」と話す。

 金沢市の印刷所で自ら印刷、製本。5月末に150部を作り、50部は5書店で販売して完売した。今月末、500部を増刷し、一部千円で販売している。詳細は、鹿野さんのインスタグラム(@momoka_kano)へ。(林敏行)