国の特別天然記念物で絶滅危惧種のニホンライチョウで、野生の雄を使った人工繁殖が6月28日、富山市ファミリーパークで成功した。野生種の精液で人工繁殖が成功したのは国内初で、ファミリーパークの雌に授精し、2羽が生まれた。

 野生種の遺伝子を入れることで、園内で飼育するライチョウの血縁が近くなるのを防ぐ意味がある。ひなの体重は約15.4グラムと約17.8グラム。性別は分かっていない。

 5月25と26日に乗鞍岳(岐阜・長野県)で雄5羽から精液をとり、うち3羽分を園の雌5羽に人工授精した。乗鞍岳から比較的近く、授精ができる同園が選ばれた。6月5日までに産んだ卵12個を人工で温めていた。このうち2020年8月生まれの雌が産んだ卵が孵化(ふか)した。どの雄が親なのかは、今後の遺伝子検査で調べる。ひなは現在のところ、展示公開の予定はない。

 同園動物課の岸原剛さんは「近親交配が進むと、生まれる個体が弱い場合がある。野生由来の遺伝子が飼育集団に入ると、多様性が保たれ、ペアリング(交配)の幅も広がる」と解説した。

 日本動物園水族館協会は、環境省とライチョウの保護増殖や生息域外の保全に取り組んでいる。(小西良昭)