昨年7月に札幌・ススキノで起きた「首切り殺人事件」。娘の田村瑠奈被告(30)や夫の修被告(60)と共に逮捕され、死体遺棄・損壊の幇助罪に問われている浩子被告(61)の第2回公判が、7月1日、札幌地方裁判所で開かれた。法廷では瑠奈被告が自宅の中で被害男性の「生首」を損壊していくグロテスクな場面が生々しく再現された。(前後編の前編)

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娘を「お嬢さん」と呼び、「ドライバーさん」と呼ばれていた修被告

〈そこで目にしたのは、浴室の洗い場に置かれている、皮を剥がされ全体が赤くなった人間の頭部でした。浩子さんは、この世の地獄がここにあると思い、深い絶望感に襲われました〉(弁護側冒頭陳述より)

〈この出来事があった前後、浩子さんは瑠奈さんから「目玉が入っているから見て」と言われて、目玉が入ったガラス瓶を見させられたこともありました〉(同)

 6月4日、3人の中で先行して始まった妻・浩子被告(61)の裁判の初公判では、瑠奈被告が被害者の死体を損壊していると知った時に浩子被告を襲った「絶望感」が弁護人によって明かされた。第2回公判では父・修被告の視点で、自宅の中で頭部が損壊されていく様子がより詳細に再現された。

 既に知られているように、田村家では“瑠奈ファースト”と彼らが呼んでいた特殊な家族関係が出来上がっていた。瑠奈被告は自分のことを「お嬢さん」と呼ばせ、修被告のことは「ドライバーさん」、浩子被告のことは「彼女」と呼び、2人を奴隷のように隷属させていた。

 そんな異常な家族関係があったからこそ、父母は瑠奈被告が殺害した被害男性の頭部を自宅に持ち込んでいることがわかった後も警察に届けなかったのである。

首を「拾った」と父に語った瑠奈被告

 修被告は事件当日、瑠奈被告の送迎を担当。帰宅後、瑠奈被告が玄関でビニール袋に入った被害男性の頭部を取り出すシーンから目撃していた。以下は検察官が読み上げた修被告の供述調書である。

〈自宅に着く直前、娘から「コンビニで氷を買って欲しい」と言われてローソンに行き、パーティ用の氷袋を買ってきてと言われた。1キログラムくらいの氷袋を買ったが何袋かは数えていない。何に使うかは聞かなかった。

 車を発信させ自宅につき、私が鍵を開けた。娘は鍵をなくしていて持っていなかった。娘はスーツケースと手提げを持って入って、玄関の電気をつけて「氷袋2つ持ってきて」と言った。コートの背中が膨れていて、リュックを背負っているのかと思った。行くときには背負っていなかった。氷袋を2つ持って行ったが、まだ3袋以上残っていた。5袋以上購入したのだと思う。

 玄関に入ると娘はすでにコートを脱いでいた。スーツケースのファスナーを少し開け、さらにファスナーを下ろした。右手を入れ、中から黒いビニールを握って取り出した。

 上部分を持っていて、下の方が小ぶりのスイカのような形状をしていたので「それは何?」と聞くと娘は「首」と答え、少しして「拾った」と言った。「氷持ってきて」と言われ2階へ持って行った。

 娘は洗面所と浴室の電気をつけると、衣装ケースの中に黒いビニール袋を入れた。浴室の水を出し、ケースの中に少量の水を入れ「氷ちょうだい」と言われたので2つ手渡した。なにか作業していたが、私はびっくりして頭が真っ白になっていた。娘がそんな冗談を言うわけがないので首なら被害者の首だと思った〉

梅酒のつけるのに使っていた小瓶の中に入っていた「人体の一部」

 事件翌日の7月2日には妻と情報を共有し、報道で被害男性が殺害されたことも知った。

〈午後1時から3時まで理事をしているNPOの年次総会があり、午後4時ごろ帰宅した。妻は2階にいて、一緒に買い物に行く車の中で二人になったので、娘が「拾った首」というものを持ち帰り、浴室にあるという大まかな話をした。なんとなく把握しているような感じだった。

「首みたいなものを持って帰ったがまさかね」とスマホで調べたが、「すすきの 殺人」で検索しても情報はなかった。その後も検索し続け、夕方に記事で、首のない死体が見つかったという内容をみて、信じたくないがとんでもないことが起きたと思った。被害者の本名もそこで知った〉

 そして事件から数日後、修被告は仕事から帰宅した時、娘から「見て欲しい」と小瓶を二つ渡された。10センチ四方の円柱のガラス瓶で、梅酒をつけるのに使っていた小瓶だった。

〈中に人体の一部分、舌の一部と眼球らしきものが入っていた。透明な液体だったと思われるが、体液が滲み出て混濁した状態になっていた。ショックを受けて、人体の一部が自宅にあること、持ち帰ったものが本当の首なんだと思った。

「どう?」と感想を聞かれたがぼうっとしており「びっくりした」「すごいね」などと返事をしたと思う。妻もこれを見せられたと思うが妻は見ないと言っていた〉

目や口の周りに穴が空いていた頭部

 さらに、修被告は瑠奈被告が頭部を損壊する様子を撮影する役割まで担ったのである。

〈娘に「用事があるからきて」と言われ、歩いて行くと浴室前に着いた。その頃私は1日の睡眠が数時間でぼーっとしていた。洗面所でハンディカメラを渡された。

 令和5年6月に購入したもので、娘は私に「これから作業するから撮影して欲しい」と言ってきた。そこには片目がくり抜かれている人体の頭部が置かれていた。球状の黒いビニール袋は見ていたが、頭部を見たのは初めてだった。

 目や口の周りに穴があいていた。娘から言われ、ハンディカメラで撮影していると、残りの眼球を手際よくくり抜いていた。目の周りの組織に切れ目を入れ、メスのようなものでくり抜いていた〉

後編では、法廷で証人として出廷した修被告が事件や家族関係について振り返った場面を伝える。

デイリー新潮編集部