砂浜が目の前に広がる、石川県珠洲市の自主避難所。その広場に掲げられた黄色いハンカチが、海風にはためいている。

 同市馬緤(まつなぎ)町の市自然休養村センターでは、地震直後から地区の住民が自主避難所を開いている。今も毎晩約15人が、壊れた自宅で過ごす代わりに寝泊まりしている。

 映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」になぞらえ、5月末に住民が制作を提案。不織布をB4サイズに切るなどして、6月5日に約70枚を広場に飾った。その後、住民やボランティアらがメッセージを書いた「ハンカチ」が増え続けている。

 住民の坂秀幸さん(69)は「二次避難先などで地区を離れた人に、黄色いハンカチを目印にして帰ってきて欲しい、という願いを込めた」。

 坂さんの自宅は半壊認定を受けたが、公費解体の時期はわからない。跡地に小さな家を建てる計画もあるが、先行きは見通せない。地区内で仮設住宅の建設予定はなく、全半壊した自宅の公費解体を待つ住民も多いという。

 「希望する人が地元に帰れるよう、見通しを示して欲しい。避難先での生活が長くなるほど、戻りにくくなる」と話した。(林敏行)