石川県は21日、2024年度一般会計6月補正予算案として742億円を計上すると発表した。2月の当初予算に続き、能登半島地震対策が主で、被災者の孤立対策や液状化被害の支援などを盛り込んだ。

 予算規模は6月補正としては過去4番目の大きさ。当初予算と合わせた一般会計の累計額は1兆1843億円と過去最大を更新した。補正予算案は28日開会の県議会定例会に提案する。

 742億円の半分の393億円を地震対策が占め、当初予算や前年度の予算と合わせると地震対応に8223億円を割く。

 被災者支援として7億4365万円を盛り込んだ。能登では、仮設住宅で暮らす人が1万4千人を超え、災害関連死や孤立による心身の悪化への懸念がある。一方、外部から入っていた医療や福祉の災害支援チームが月内でおおむね活動を終える。そのため、在宅や仮設で暮らす人への戸別訪問、食生活や運動の支援、心のケアに力を入れる。また、被災地の介護職員確保のための支援策として8億6千万円を計上した。

 要支援者をつかむために大切な「被災者データベース」の強化に3億円余り割き、一人一人がどのような支援を受けているのかわかるよう、システムの機能を上げる。

 もう一つの注目は、液状化した宅地や住まいへの支援だ。宅地の復旧に最大766万円、住宅の耐震化とともに家の傾きを修復した場合に最大150万円を補助する。関連費は30億円余り。

 一方で、液状化は広範囲で起き、地域全体の整備とも絡むため、所有者の一存では対応を決められない難しさがある。国も対応を検討中だが、馳浩知事は「もう発災5カ月だ。被災者の怒り、あきらめの声がある。まずできることを進める」と述べた。

 震災対応の検証にも力を入れ、専門家による会議をつくって年内に結果をまとめる。

 地震対策を進めるため、地震前に144億円あった県の財政調整基金を71億円取り崩し、国の交付税措置を受けても残高は66億円に半減した。

 馳知事は補正予算案について、「復活と希望」と説明。「県民の安心安全のために必要な財政支出は当然する。同時に、財政健全化の観点は絶対に外してはならない」と述べた。(土井良典)

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 補正予算案では、地震対応のため当初予算で棚上げされていた、公共施設の移転再整備を含めた県の発展につながる大型事業も計上された。

 その筆頭格の西部緑地公園の再整備は、予算が膨らむ影響が極めて大きいとして優先順位が下げられ、事業費の精査や工事手法の検討分として300万円にとどまった。馳知事は「基本計画の着手時期は財政負担を十分見極めて判断する」とした。

 金沢城二の丸御殿の復元整備については、昨年度までに専門家による建築設計を議論し、本年度から工事に着手すると表明。現場を覆う仮設の建物の工事などに16億5千万円余りをかける。

 完成から半世紀以上が過ぎ、老朽化が著しい県社会福祉会館(金沢市本多町)は、広い駐車場が確保できるとして金沢西高校第2グラウンド(同市鞍月)に移転整備する方針。基本構想策定に1100万円を計上した。

 馳知事は「(地震で悪化した)財政を考えれば一気にはできない。財政健全化の観点は絶対に外してはいけない」と述べた。(土井良典)

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■6月補正予算案の主な地震関連事業

▽液状化被害を受けた宅地の復旧や住宅の傾斜修復などへの支援 30億4625万円

▽被災者の見守り(在宅・仮設入居者らへの戸別訪問や食生活支援、心のケアなど) 7億4365万円

▽県の地震被害想定の見直し、初動対応を含めた検証 1億2900万円

▽水道の宅内配管修繕で地域外業者を利用した場合の燃料費を含めた、かかり増し経費補助 1億6千万円

▽なりわい再建 被災事業者の早期営業のための仮店舗・仮作業場の整備応急経費を最大300万円支援 10億円

▽被災地でサテライトキャンパスを推進 学生と住民の交流を図る 300万円など

▽能登の祭りの再開支援 被災エリアの祭りの準備・開催経費を3年間で最大150万円を助成 5千万円

▽能登空港の支援者宿泊施設の近くに10月ごろにも仮設のフードコートを整備 5億円

▽のとじま水族館の夏休み前の再開へ、展示魚類の購入支援 2500万円

▽運動環境が整わない県立高校生が金沢市などで部活動をするための移動費への支援 640万円