人口が世界一のインドで19日、総選挙(下院)の投票が始まる。2期10年にわたり政権を率い、大国としての存在感を高めてきたモディ首相が3期目を狙う。

 今回の選挙は小選挙区制で543議席を争う。広大な国土や有権者の多さから、投票は地域ごとに計7回に分けて6月1日まで実施。6月4日に全国一斉に開票される。

 地元テレビ「タイムズナウ」などが16日発表した最新の世論調査では、インド人民党などの与党連合が優勢で、前回総選挙で獲得した353議席を上回ると見られている。

 2014年から首相を務め、支持率が6割を超えるモディ氏は、道路や空港、橋などのインフラ整備の実績を強調。長期政権を見据える。

 14日に発表した党の公約では、2036年の夏季五輪の誘致や、インド版新幹線として日本が支援する高速鉄道網の拡大も掲げた。

 一方、最大野党の国民会議派は「若者の失業やインフレ対策が不十分だ」と批判する。選挙直前には、首都ニューデリーの行政トップで、野党連合の有力な指導者のケジリワル氏が汚職容疑で逮捕された。支援者のアルン・クマールさん(27)は「モディ氏の独裁主義だ。許されない」と怒りをぶつける。

 国連の推計によると、インドは昨年、中国を抜いて人口が世界一になったとされる。インドの国内総生産は過去10年で世界10位前後から5位にまで上昇し、今後数年で米国や中国に次ぐ3位になると言われている。

 モディ政権は、欧米や日本などと関係を深め、企業誘致や投資を歓迎する一方、歴史的につながりのあるロシアとも良好な関係を維持。近年は、他の新興・途上国の代弁者としても国際社会で存在感を増すなかで、政権の継続を目指す。(ニューデリー=石原孝)