「国の責任を認めず」「多数水俣病と認める」。18日、新潟地裁(新潟市)前に、そんな旗が出された。水俣病の被害救済を求める「ノーモア・ミナマタ2次訴訟」の新潟訴訟判決は評価の分かれる内容となった。3月の熊本地裁判決で全員の請求が棄却され、控訴した熊本訴訟の原告や弁護団は複雑な思いで受けとめた。

 この日午後1時40分ごろ、新潟地裁前で二つの旗を見た、熊本訴訟の森正直原告団長(73)は「棄却された原告がいるのは厳しい判決」とこぼした。原告全員を水俣病を認めた大阪地裁判決が「当然」との立場だからだ。

 その後、弁護団らが判決の分析を集会で報告。熊本地裁では水俣病と認められながら、提訴時期が遅いという「除斥」を理由に原告25人の請求が棄却された。だが、新潟地裁は「著しく正義・公平の理念に反する」として除斥を適用しなかったと分かり、「(熊本訴訟の)高裁での戦いに向け、勇気づけられる」と森団長は表情を緩めた。

 熊本地裁ではまた、原告の症状が水俣病だと主張する際に、民間医師団による共通診断書を証拠として出したが、信用性が認められず、大量の棄却につながった。新潟の判決でも共通診断書には厳しい評価を下された。熊本訴訟弁護団の寺内大介事務局長は「そこは残念。大阪、熊本、新潟の判決で評価が分かれたが、共通診断書はノーモア1次訴訟で国と和解する際に判断材料として用いられた。共通診断書も用いながら早期救済を図るよう国に働きかけたい」と話した。(今村建二)

 熊本訴訟では25人の原告が水俣病と認められながら、訴える時期が遅かったという除斥を理由に請求が棄却された。

 除斥について新潟地裁は「自らが水俣病と認識するに至らず、可能性を認識していたとしても差別・偏見から請求をちゅうちょしていた」としたうえで、「(除斥を適用することは)著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥の考えを排除した。

 熊本訴訟原告団長の森正直さん(73)は、「とても救われた。高裁での戦いに対して勇気づけられる」と喜んだ。ただ、そもそも全員救済を求めての戦いだけに「棄却された人がいるのは残念」とも語った。

 熊本訴訟弁護団の寺内大介事務局長は、三つの判決で判断が分かれた点を踏まえ、「これを統一するのは最高裁ではない」と指摘した。各地の原告団は高齢化が進み、平均年齢は70代。裁判の途中で亡くなる原告も多い。「被害者の症状をどうとらえて、だれをどう救済するかは行政の責任で決められること」と話し、長い裁判を続けるのではなく、早期の救済を国に求めていく考えを示した。(今村建二)