山口県上関町で計画されている使用済み核燃料の中間貯蔵施設をめぐって、県内の市民団体が16日、中国電力との「共同開発」を検討する関西電力(大阪市)に、建設中止を求める26万3230人分の署名を提出した。コスト低減を狙った共同開発だが、中電の管外からの核燃料持ち込みに疑問や反発が相次ぐ事態になっている。

 署名を提出したのは「原発いらん!山口ネットワーク」など5団体。「中間貯蔵施設は、核燃料サイクル政策が破綻(はたん)している状況を踏まえると、『最終』の貯蔵施設になる可能性が高いこと、そして長期にわたって安全に貯蔵できる保障がないことは明らか」として建設中止を求めた。

 署名提出後、関電本店前での抗議行動に約40人が集まった。「山口ネットワーク」の小中進代表は「中電や関電は中間貯蔵施設は安全というが、それならば関電管内で出た使用済み核燃料は関電管内で処理すべきだ。関西の皆さんにも自分たちの問題として捉えてほしい」と訴えた。

 抗議の趣旨に賛同した関西の団体も集まった。京都から来た「老朽原発うごかすな!実行委員会」のメンバー木原壮林さんは「上関を巻き込んだ問題は、関電が使用済み核燃料プールに空きを作りたいというところから始まっている。使用済み核燃料を生み出す原発を廃炉にすることが重要だ」と話した。

 中電は関電との共同開発について、計画を明らかにした昨年8月の会見で、建設や完成後の運営について協業する方針を示した。

 中電は、管内の島根原発の使用済み核燃料だけを搬入する規模の施設では、建設や運営のコストが過大になるといい、コストを減らすため、関電側に協業を提案したと説明している。

 一方、関電にとって、使用済み核燃料の保管場所は長年の課題だ。核燃料は原発の保管プールにたまり続け、4〜7年で満杯になる状況という。

 関電の原発が多く立地する福井県は1990年代後半から、使用済み核燃料の県外への搬出を主張。関電が2023年10月に示した搬出計画では青森県六ケ所村の再処理工場で26年度に燃料受け入れが始まることを前提に、中間貯蔵施設の操業を30年ごろに「福井県外」で始めるとしている。

 上関町や周辺市町では、中間貯蔵施設に対する賛成・反対以前に、関電という「管外」から核燃料が持ち込まれることへの反発が相次ぐ。首長や議員からは「根強い不信感がある」「市民は不安を抱いている。コスト(低減のため)と言われても納得できない」などの指摘が中電による説明会の場であった。

 関電の広報担当者は取材に対して「中電の調査・検討について当社としても中電の求めに応じ必要な対応を行って参りたい。署名の提出についてはコメントを差し控える」と話した。(山野拓郎)