有識者でつくる人口戦略会議が24日に公表した報告書で、京都府内の9市町村が「消滅可能性」を指摘された。日本創成会議の10年前の発表に続くもので、前回の13市町村からは減っているが、少子化の基調は変わっていない。

 報告書は、2020年から50年の30年間においての20〜39歳の女性人口(若年女性人口)の動向をもとに分析した。若年女性人口が減る限り出生率は下がり続け、総人口の減少にも歯止めがかからないとし、30年間で50%以上減る自治体は「消滅可能性自治体」とした。

 府内で消滅可能性自治体となったのは、宮津市、京丹後市、井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、南山城村、京丹波町、与謝野町。宇治田原町を除く全ての市町村が前回に続き、消滅の可能性があるとされた。笠置町は減少率が85・7%で、全国ワースト5位だった。

 一方で、綾部市、城陽市、南丹市、久御山町、伊根町は、消滅可能性を前回指摘されていたが、今回は脱却した。

 若年女性人口の減少率が低く、将来も自治体が存続する可能性が高い自治体は「自立持続可能性自治体」とされ、全国65あるうち、木津川市と大山崎町が該当した。

 前回に続いて消滅可能性を指摘された井手町の担当者は「人口減少の現状を事実として受け止める」と話した。町では前回の公表以降、18歳までの子どもの医療費無償化や第2子以降の保育料の無償化など「府内でも高いレベルの子育て政策をしている」という。

 JR奈良線の高速化・複線化や国道24号バイパス建設など生活インフラ整備も進んでいるとし、「子育て支援と同時にハード面も整えば、若い世代の増加も期待できるのでは」と語った。

 府総合政策室は「人口減少の厳しい状況は10年前から変わっていない。市町村と連携しながら子育て政策や若者の府内への定住支援などを進めたい」としている。(西崎啓太朗)

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 24日に公表された「人口戦略会議」の報告書で、京都市は京都府内で唯一「ブラックホール型自治体」に分類された。出生率が低く、他からの流入に依存しているためだ。

 人口移動があると仮定した場合の若年女性人口の減少率が50%未満である一方、ないものとして試算した減少率が50%を超える自治体がこの型に分類された。全国では計25自治体が該当し、京都市の他には大阪や東京などの都市部が並んだ。

 京都市の出生率は全国的にも低い水準だ。厚生労働省が19日に発表した1人の女性が生涯に産む見込みの子の数を示す合計特殊出生率(2018〜22年)で、京都市東山区が市区町村別で0・76と全国最低だった。ワースト3位には上京区の0・80、4位には下京区の0・82が入る。市全体では1.13だが、市中心部の出生率の低さが際立つ。

 若い単身世帯が多いことが背景にある。京都市には大学や短大が集積し、人口の1割を学生が占める。合計特殊出生率は15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計したものであるため、単身の若い女性が多い自治体は低く出る傾向だという。

 市の担当者は「全国的に見れば京都には若者が流入している。人口を抱えるからこそ、出生率を上げていく必要がある」と話した。今後、子ども医療費支給制度の拡充などを検討しているという。(武井風花)