8日に日本橋三越本店(東京都中央区)で始まる「第52回伝統工芸陶芸部会展」には、朝日新聞社賞を受賞した台東区の陶芸家、小山耕一さん(64)の「彩色蓋器(さいしきがいき)」などの入賞・入選作220点が出品される。同区にある小山さんの「東京竜泉窯」を訪ねた。

 小山さんは玉川大学で陶芸を学んだ後、一般の人に教える日本陶芸倶楽部に入社。その後、1990年に台東区竜泉に窯を開き、制作を続けながら陶芸教室を開いている。

 受賞した「彩色蓋器」は茶席で使う菓子器で、蓋(ふた)に薄紫色の楕円(だえん)形の模様を配した上品な作りになっている。金ガラスを1千度強の高温で溶かすことでこの色を出し、蓋の金色の部分や器の内側のピンク色なども焼き分けて、色の違いを出しているという。この作品では、計6回のべ48時間にもわたり、窯で焼いた。小山さんは「陶器は窯を開けてみないとどうなるか分からない。窯出しの瞬間が一番楽しみで緊張する。思い描いているものが焼けると、本当にうれしいですね」。

 これまでにも同展でたびたび受賞、日本橋三越で個展も3回開いた。教室には関西や東北などから通う人もいる。根を詰めて制作に没頭するため、教室で生徒と作品を作る時間が楽しく、心穏やかになる。「色の出し方など一つ課題を達成しても、新たな疑問がわいてくる。40年以上陶芸をしていますが、その奥深さが魅力です」。陶芸部会展は13日まで、日本橋三越本店本館6階美術特選画廊で。(高橋友佳理)