昨年9月の台風13号で大きな被害が出た養老渓谷(千葉県市原市、大多喜町)で、温泉街を流れる養老川の河川改修工事が26日から始まる。休業が続いていた旅館が営業を再開し、復旧の動きも進む。

 大雨で川に流れ込み、底にたまった土砂を取り除く「河道掘削工事」で川の容量を増やすとともに、水の流れを良くして大雨の際の氾濫(はんらん)を防ぐ。

 県市原土木事務所によると、撤去する土砂の量は約2千立方メートルで、6月中に完了する予定。すでに川沿いに重機が入り、準備が進んでいる。

 昨年9月の台風13号では、記録的な大雨で養老川があふれ、県内有数の観光地とされる養老渓谷に大きな被害をもたらした。名物の「黒湯」で知られる温泉街も多くの旅館が浸水被害を受けた。市原市側にある二つの旅館は長期間の休業を強いられた。

 木造2階建ての老舗旅館「鶴乃家」は、浴槽やボイラーがある階が水没したが、3月に半年ぶりの営業再開にこぎ着けた。

 旅館は創業約100年で、3代目の鶴岡義高さん(63)と京子さん(60)夫妻が切り盛りしている。「先が見えず、気持ちがずっと沈んでいましたが、ホッとしています」と話した。

 ゴールデンウィークの予約も順調で、常連客から「やっとだね」「頑張ってください」と励ましの声が届いた。鶴岡さん夫妻は「ありがたいこと。大切な温泉をしっかり守っていきたい」と気持ちを新たにしている。

 一方、鶴乃家に隣接する旅館「喜代元」の営業再開は8月になる見通し。旅館のすぐ前を養老川が流れ、1階が水浸しになった。

 経営する秋葉保雄さん(65)によると、玄関は1・7メートルほどの高さまで水がつかり、事務所や厨房(ちゅうぼう)施設などが使えなくなった。

 ショックは大きく、一時は廃業も頭によぎった。県が川の改修を約束してくれたことで再建を決断した。今後の浸水被害に備え、床を20センチほどかさ上げし、建物を支えるはりを補強するなど全面的にリニューアルを進めている。

 養老渓谷観光協会長を務める秋葉さんは「早く営業を再開し、養老渓谷を盛り上げていきたい」と話している。(前田基行)