NHK・Eテレで毎週日曜日に放送されている、京都アニメーション制作の「響け!ユーフォニアム3」。作品に登場した小さな神社の粋な計らいが、アニメファンを喜ばせている。

 宇治川にかかる隠元橋に近い許波多(こはた)神社(京都府宇治市五ケ庄古川)。4月27日朝、神主の木村顕治さん(59)と妻の光枝さん(59)が拝殿の扉を次々と外した。中に保管されていた2基の大神輿(おおみこし)が、参拝者にも見えるようになった。

 木村さんによると、作られた時期が正確に分からず、文化財には指定されていない。ただ室町時代の末期に神輿が作られたとの記録はあり、「恐らくそれがこの大神輿だろう」。

 昭和30年代半ば以降は巡行することもなくなった。ここ数年は、11月の秋季大祭(11月1〜3日)、歳旦祭(1月1〜3日)、節分星祭(2月1〜3日)に合わせて拝殿の扉を外し、参拝者に披露していた。

 そんな神輿が、架空の北宇治高校吹奏楽部を舞台とするアニメに描かれた。4月21日放送の第3回で、1年生部員・義井沙里の家という設定で許波多神社が登場。沙里の同級生たちが境内で過ごす場面で、ほんの2秒ほど、神輿をバックに写真を撮るシーンがあった。神輿と一緒に置いてある獅子頭も、しっかりと描き込まれていた。

 アニメに登場した場所を「聖地」と呼んで巡るファンは多い。木村さんは「神輿が見られなかったら、せっかく来てくれたファンは寂しがるだろう。常設展示は無理でも、できる限り多くの人に喜んでもらいたい」と、大型連休(4月27〜5月6日)、6月1〜5日、7月13〜15日、8月10〜12日、9月14〜16日、11月4日も追加で神輿を披露することにした。

 その日程を知らせる紙を境内に貼ったところ、訪れたファンが写真に撮ってX(旧ツイッター)で発信。すると、ファンらの間で拡散し「まさに神対応 神社だけにw」「コロナ禍中の秋祭りは御神輿見られなかったので、これは嬉しいご対応ですね」などと好意的な反応が相次いだ。

 高校時代は吹奏楽部でトランペットを吹いていたという木村さんは、「響け!」のファンでもある。2年前に京アニによる神社取材の打診があり、快く引き受けた。「愛着を持っている作品に取り上げてもらい、夢のような気持ちだ」という。

 許波多神社は飛鳥時代の645年、孝徳天皇が中臣鎌足に命じて創建されたと伝わる。鎮座地は現在より東側、高峰山のふもと(宇治市五ケ庄三番割)だったが、陸軍火薬庫の建設に伴い、1876(明治9)年に現在の場所に移った。市内には同じ名前の神社がもうひとつあるが、平安時代に分社したものとされる。

 木村さんは「宇治でも由緒ある神社だが、観光地ではなく参拝に訪れる人は少ない。これを機に多くの方が許波多神社を知り、好きになってもらえればうれしい」と話している。(北川学)