京都市在住の漫画家、南久美子さんの企画展「漢字でほっ」が、漢字ミュージアム(京都市東山区)で開かれている。漢字と絵を組み合わせた「ほっ」とできる描き下ろし14点を展示。漢字の知られざる由来を阿辻哲次館長が紹介する「漢字雑学」のコーナーも好評だ。

 南さんは1972年に京都精華短大(現・京都精華大)を卒業後、4コマ漫画でデビュー。筆を用いて、作品を見た人が癒やされるようなメッセージと絵を組み合わせた作品を描いてきた。南さんはこれを「遊墨(ゆうぼく)マンガ」と呼ぶ。西陣のアトリエ「ほっ」を主宰する。

 企画展は、十数年来の知り合いという阿辻館長が南さんに呼びかけ、「漫画」と「漢字」の本格的なコラボが実現した。

 展示する14点は、春から初夏にかけての季節感が出ている漢字を中心に選んだという。

 例えば「桜」には、三色だんごにひらひら舞う桜の花びら。「竹」にはタケノコがにょきにょき育つさま、「鼻」では花粉症で苦しむ様子を描いた。「漢字って、元々は象形文字なんだなあって、改めて感じ入りました」と南さん。

 作品に添えられた「漢字雑学」もユニークだ。「鼻」の中に「自」が含まれるのは「日本、中国、韓国では、自分を指すときに人さし指で鼻を押さえるから」と阿辻さん。

 出会いの春。「会」という漢字は、穀物を蒸すために三本足の鍋の上に両手鍋を重ねた姿を表すという。両手鍋に穀物を入れ、三本足の鍋から上がる湯気で蒸す。穀物を効率よく蒸すには二つの鍋をぴったり合わせる必要があり、「あう・あわせる」という意味が生まれた。

 6月の花嫁は幸せになれるという。「幸」は長い間に意味が変わってきた漢字の一つだ。元々は罪人の両手にはめる手枷(てかせ)、つまり、手錠を指したという。それを裏付ける証拠の一つが、執行猶予の「執」という文字だ。これは、手錠(=幸)をひざまずいた人間(=丸)にかけている形を表している。

 手錠という負のイメージから、幸せという真逆の意味で使われるようになったのは、「もっとひどい刑罰を科せられるだろうと思っていたら、案外軽く済んでラッキー」と罪人が感じたことに由来するらしい。

 阿辻さんは言う。「最高の相手にめぐりあいたいと誰しも思う。でも、それほどひどい人じゃないし、自分にはまあこの人でちょうどいいのかなあと考えるところに、人生の本当の『幸福』があるのだ、と漢字は教えてくれています」

 6月30日まで。入館料は大人800円、大学生・高校生500円、小・中学生300円。企画展は無料。月曜休館だが、今月は6日も開館し、7、8日が休館。問い合わせは漢字ミュージアム(075・757・8686)。(日比野容子)