川勝平太・静岡県知事の辞職に伴う知事選で、自民党県連は18日、元副知事の大村慎一氏(60)を推薦する方針を決めた。一方、立憲民主党は前浜松市長の鈴木康友氏(66)の推薦方針を決定し、連合静岡、国民民主党県連、県議会会派「ふじのくに県民クラブ」と足並みをそろえた。15年続いた川勝県政後を決める知事選は国政の与野党が対決する構図になり、今月28日投開票の衆院3補選に続き、岸田政権や衆院解散の先行きにも影響を与えそうだ。(青山祥子、田中美保、青田秀樹、大海英史)

 県議会最大会派「自民改革会議」は18日、議員総会を開いた。土屋源由総務会長、河原崎聖政調会長が前日に大村、鈴木両氏に面談した結果を報告し、議論を交わした。

 議員からは、大村氏が県東部、中部、西部に目配りしている点や総務官僚としての経験を評価する意見が出た。一方、知名度の高い鈴木氏を念頭に勝てる候補を選ぶべきだという声もあった。

 こうした議論を踏まえ、総会後に開いた自民党県連役員会で大村氏推薦の方針を固め、再び開いた議員総会で了承された。総会後、増田享大幹事長は「全県的な視点で県政の課題をとらえている。(総務省で)防災や危機管理の分野に精通し、大村さんという声が多かった」と述べた。22日の常任選挙対策委員会と総務会で正式決定し、党本部に上申する。

 大村氏推薦の流れは、役員や国会議員らが静岡市内で集まり、「推薦候補の一本化」を決めた14日前後から高まりつつあった。ある国会議員は鈴木氏が知事になれば県西部中心になるとの懸念から「大村氏で一本化できる」と打ち明けた。

 大村氏の地元の静岡市の支部と市議団が独自に推薦する方針を固めたほか、東部や伊豆でも県議らが大村氏支援に動き始めた。県連は各県議に支援者らから100人以上の声を聞くよう求め、多くの県議の地元で大村氏支持が過半数を占めたという。

 「いまは鈴木氏のほうが知名度が高いが、十分に上積みできる」。ある有力県議は事前の情勢調査も確認したという。

 自民は川勝知事に対して2009年知事選以降、推薦候補の敗退や自主投票で苦杯をなめてきた。今回も派閥の裏金事件で逆風が吹いているが、「戦わずに終わっていいのか」(県議)という声が出ていた。

 国政の与野党対決の構図になるが、増田享大幹事長は「あくまで応援する支援の輪の中に入る、参加するという気持ちだ」と述べた。あえて前面に出ず、「川勝県政の継承か否か」を問い、逆風をしのぐ構えだ。

 一方、鈴木氏が市長を務めた浜松市では、市議らが独自に鈴木氏の支援に動く。有力市議は「市議はほとんどが鈴木氏支援であり、浜松の経済界と動く」と話す。

 推薦の連絡を受けた大村氏は18日、記者団に対し、「私の理念や思いが理解いただけた」と述べた上で「私は無所属で、県民党の立場でやっている」と強調した。

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 立憲民主党県連は18日、静岡市内で幹事会を開き、鈴木氏を推薦することを決めた。22日に党本部に上申し、23日にも党本部が正式決定する。

 幹事会後に会見した曳田卓代表補佐は、大村氏を推す意見もあったとした上で「鈴木氏が県政の発展に適任だという意見で一致した」と語った。すでに鈴木氏の推薦・支援を決めている連合静岡、国民民主党県連、ふじのくにと19日に協議を開き、4者統一の推薦・支援を確認する。

 立憲は18日、幹事会に先立って鈴木、大村両氏から政策について聞いた。面談を終えた鈴木氏は「産業政策や防災など県にとって重要な施策について考えを伝えた」と語った。連合などからの推薦について「多くの団体、政党から推薦やご支援をいただけるのは本当に心強いこと。そうした支えをベースに自分の主張、政策を訴えたい」と話した。