5月26日投開票の知事選は与野党対決の構図が固まったが、自民党県連が推す元副知事の大村慎一氏(60)と連合静岡や立憲民主党県連、国民民主党県連などが推す前浜松市長の鈴木康友氏(66)の政策には明確な違いが見えにくい。県民の暮らしやリニア中央新幹線、浜松市の新県営野球場などにどう臨むのか。(大海英史、田中美保、青山祥子、斉藤智子)

 大村氏は10分野の基本政策を挙げ、とくに防災・危機管理に重点を置く。15日の政策発表会見では、総務省消防庁の国民保護・防災部長として災害対策を担った経験をもとに「南海トラフ地震を踏まえ、基盤整備を頑張らなくてはいけない」と述べた。災害関連死を防ぐため、県と市町の連携も進めるという。

 また、デジタル活用の先進県を目標に「静岡デジタル大学」の創設をめざす。「デジタルはこれからの社会の基盤。人手不足の課題を解消し、生産性を向上できる」として、デジタル人材の育成に意欲を示した。

 子育て支援では19日の報道陣の取材に対し、2人目以降の子どもの保育料無償化をめざすと表明した。静岡市が昨年度から導入しており、「全県で無償化できるように市町と話し合いたい」と述べた。

 リニア中央新幹線や浜松市の新県営野球場、浜岡原発再稼働などの課題は、「対話」によって解決していくと強調する。リニアは「推進」の立場とし、前提として水資源や南アルプスの環境保全について万全な対策をJR東海に求める。

 国家的なプロジェクトだということを踏まえて国にも対応を求めるという。「(東海道新幹線とは)別ルートがあることで国全体が強くなる。JR東海にはなぜリニアが必要か、もう一度県民に説明してもらうことが必要」と話した。

 鈴木氏は19日、県庁で会見し、9項目からなる政策骨子を発表した。会見の冒頭に「幸福度日本一をめざす」と述べ、健康増進に加えて豊かさや満足度といった指標で県民が感じる幸福度を日本一にする目標に掲げた。

 産業振興で強調したのは企業誘致や「スタートアップ」と呼ばれる新興企業の後押しだ。浜松市長時代に取り組んだ実績を挙げ、「東部、中部、それぞれの地域特性に合わせた成長産業の誘致に取り組む」とした。

 県東部・伊豆地域は首都圏に近く、大きな可能性があると語り、そこで働く若者らの移住を促す考えも示した。「浜松の経験を生かし、静岡県をスタートアップ先進県にしたい」という。

 市町との関係改善を図ることも訴えた。市長時代、コロナウイルス感染防止策をとった飲食店の認証制度を県に提案したが、かなわなかったといい、市町からの提案や取り組みを全県に広げるなどして「県は御用聞き、という姿勢でやっていきたい」と話した。

 リニア中央新幹線静岡工区については、「以前から推進と言っている」と述べ、課題を克服しながら着工に向けて前進させる考えを示した。川勝平太知事の方針を継承するかどうかを問われ、「全てゼロベースだ。僕は(課題を)解決して、前に進める。やり方の違いが大きい」と述べた。

 会見では知事に当選した場合は「2期8年、全力でやる」と具体的な任期にも触れた。

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 自民党の静岡市議会議員団と市内4支部は知事選に立候補を表明している大村慎一氏への推薦を決め、議員団の鈴木和彦会長と各支部長が19日、大村氏に推薦状を手渡した。地元出身の大村氏を支援する方針を早々に決めることで自民党県連に働きかけ、県連は18日に推薦方針を決めた。

 大村氏は「静岡も東部も西部も、浜松も沼津も三島も、皆さんから支持してもらい、全県でがんばりたい」と話した。

 大村氏は同日、静岡市内で意見交換会を開き、県内で飲食や製造、介護、農業などに携わる25人から人手不足や過疎などの現状を聞いた。また、大村氏を応援する参加者有志が「オール静岡の会」の結成を発表した。今後、各地で大村氏が参加する意見交換会を開くという。