マクラーレンの2台がレッドブル、フェラーリの2強に割って入る速さを見せ、ランド・ノリスが4番手、オスカー・ピアストリも6番グリッドを獲得した。とはいえ予選はグリッド上位、レースも表彰台の常連だった去年中盤以降の勢いからすると、今ひとつ物足りないのも確かである。

 昨シーズン序盤のマクラーレンは、惨憺たる状態だった。MCL60は空力コンセプトを完全に外し、この年にF1デビューを果たしたピアストリは開幕戦では予選18番手でQ1落ち。ノリスも11番グリッドに終わった。

 ロングランペースはさらに酷く、信頼性の問題も追い打ちをかけた結果、ノリスは最下位の17番手、ピアストリは電気系トラブルで早々にリタイアを喫した。

 第2戦サウジアラビアGPもピアストリ15位、ノリス17位に終わると、マクラーレンはテクニカルディレクターのジェームズ・キーを更迭。キーが絶大な権力を振るっていた開発組織を抜本的に見直し、空力、マシンデザイン、パフォーマンスの3部門にそれぞれ責任者を置く3頭体制に切り替えた。

 しかし体制変更の成果が結実し、その年初めての表彰台を獲得するには、7月のイギリスGPまで待たなければならなかった。なので1年前の第3戦オーストラリアGP予選は、ノリス13番手、ピアストリ16番手に終わっている。

 それが今回のオーストラリアGP予選ではノリス4番手、ピアストリ6番手と、今季最高の予選結果を出してみせた。

 ただし新車MCL38は、去年型の大きな欠点のひとつだったアンダーステア傾向を完全には消しきれていない。そのため低速コーナーの多い開幕戦バーレーンGPではレッドブル、フェラーリの2強に太刀打ちできず、メルセデスと5〜8位を分け合うのが精一杯だった。対照的に超高速市街地コースのサウジアラビアGPでは、ピアストリが表彰台まであと一歩に迫った。

 今回の予選の好結果も、アルバートパーク・サーキットが2022年以降高速寄りのコースに変貌したことと無関係ではないだろう。一方でロングランペースも、マクラーレンの2台はレッドブル、フェラーリに次ぐ安定した速さを見せている。

 特にノリスは、非常にタイヤ劣化の少ない走りができている。去年より一段階柔らかいコンパウンドで戦われる決勝レースは、タイヤの使い方が大きな鍵を握ることは間違いない。その意味でノリスが今季初表彰台に上がる可能性は、決して低くない。そしてピアストリに4ポイント差をつけられている現状をひっくり返す、最大のチャンスが訪れたともいえそうだ。