4月21日、イタリアのイモラ・サーキットでWEC世界耐久選手権第2戦『イモラ6時間』レースが行われた。
タイヤや燃費戦略、コース上でのトラフィックを絡めたバトル、そして急激な天候変化への対応など、耐久レースの魅力満載となった一戦では、レースウイーク開始から劣勢を強いられていたトヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース)が僅差のトップチェッカーを受けた。
そんなイモラの決勝後のパドックから、各種トピックスをお届けする。
■ニック・デ・フリースの“史上初”
コンウェイはWECで22回目の優勝(クラス優勝を含む)を達成し、トヨタの同僚であり歴代リーダーのセバスチャン・ブエミに2勝差にまで迫った。
小林可夢偉は17回目の優勝となり、同じ日本人ドライバーの中嶋一貴、そしてロマン・ルシノフ、ポール・ダラ・ラナ、ニコラ・ラピエールと並ぶ歴代5位となった。
一方、ニック・デ・フリースは、トヨタからのわずか2回目の出走で、WEC史上初のオランダ人総合優勝者となった。なお彼は以前、2019年の富士6時間レースでレーシング・チーム・ネーデルランドの一員としてLMP2クラスで1度優勝している。
LMGT3 では、チームWRT 31号車が、BMWにとってのWEC初勝利を挙げた。これは、ドライバーのアウグスト・ファーフス、ダレン・レオンにとっても初優勝である。ショーン・ゲラエルはLMP2における過去3度の勝利に、GTカテゴリーの優勝を加えることになった。
■「雨のおかげ」で2位のポルシェ
このレース2位となったポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ6号車のケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントールのトリオは、コンウェイ/可夢偉/デ・フリースのトヨタトリオに16ポイント差をつけ、56ポイントでWECドライバーズ世界選手権をリードし続けている。
姉妹車のマット・キャンベル/フレデリック・マコウィッキ/ミカエル・クリステンセンは、トヨタ7号車から1ポイント差のランキング3位に後退した。
エストーレはレース終盤の可夢偉とのバトルで勝利を逃したことに、少しも失望していない。
「1カ月前に(テストのために)ここに来たとき、難しいものになるだろうと分かっていたと思う」とフランス人ドライバーは語った。
「僕らはフェラーリと比べて最高のパフォーマンスを逃しており、レースではタイヤのデグラデーションがトヨタやフェラーリよりもはるかに多かった」
エストーレは、完全にドライのレースであれば、6号車ポルシェ963は5位か6位に終わっただろうと考えている。
「僕らが達成したことには、本当に満足している。僕らには2位になれるペースはなかったからね。僕らがそれを達成できたのは、他の人々よりもいい仕事をしたからだ。それはカタールでも同じだったと思う」
■2台で戦略を分けたポルシェ・ペンスキー
ポルシェのLMDhファクトリーディレクターのウルス・クラトルは、レースにおける重要な局面となった雨の際、そこまでのレースを圧倒していたフェラーリが車両ごとに戦略を分割しなかったことに驚いたと認める。
「我々は非常に注意深く調査していたが、確かに驚いた」とクラトルはレース後、記者団に語った。
「だが、我々は注意しなければいけない(当時は)それ(フェラーリの戦略)が正しい決断ではないと100%確信できたわけではないのだから」
フェラーリのタイヤ交換は、ポルシェが6号車のタイヤをウエットへと交換したあと、5号車のキャンベルをさらに2周走行させてからピットに呼び戻すことを選択した、さらに後の出来事だった。
「我々は雨の状況がどのように進展するかを見たかったが、ある時点で変えたほうが良いと判断し、5号車をピットに戻した。チャンスを最大限に活用しようと努めたのだ」
■フェラーリ“トリプルスティント”の理由
フェラーリはレース前半のドライコンディションで、ミシュランタイヤをトリプルスティントすることを選択した。対するトヨタは2回目のストップで新品の右側タイヤを装着し、ポルシェは予想以上のデグラデーションのためタイヤ4本すべてを交換した。
フェラーリのレース&テストチームマネジャーのジュリアーノ・サルヴィは、これはレースのより早い段階で雨が降るという誤った想定に関係していたと説明した。
「(スタートでは)よりタイヤのケアに優れたドライバー(50号車のニクラス・ニールセンと51号車のアントニオ・ジョビナッツィ)を起用した。雨が降ることを予想し、ロングランにしたかったからだ」
■踏んだり蹴ったりのBMW Mハイブリッド V8
BMW Mチーム WRTの15号車BMW Mハイブリッド V8は、自力でパルクフェルメに戻ることができなかったため、正式リザルトにおいて失格となった。
ラファエレ・マルチェッロ/ドリス・ファントール/マルコ・ウィットマンがシェアした同車両は、オープニングラップでの接触に巻き込まれた後、ガレージで1時間近くを過ごしたため、42周遅れの総合34位、ハイパーカーの完走車両のうち最下位に分類されていた。
BMW Mモータースポーツディレクターのアンドレアス・ルースはSportscar365に対し、ボディワークの損傷に加え、オープニングラップの混乱によりウィットマンはサスペンションに損傷を負ったと語った。
「(彼は)スタートでぶつけられたので、交換しなければならなかった」とルースは語った。
「そして、すべてが良好な状態にあることを確認したかった。なぜなら、なにかが壊れたクルマで走ると、間違ったデータや間違った情報を収集することになるためだ。それは賢明ではない。だからこそ、我々は時間をかけてクルマを修理し、再びコースに出ることににしたのだ」
■フロントガラスに問題発生
ハーツ・チーム・JOTAの共同オーナーであるサム・ヒグネットは、38号車ポルシェ963が11位、12号車が14位とポイント圏外に終わったあと、ワークス(ペンスキー)のポルシェに対してコンマ3〜4秒ほど「ペースで劣っていた」と認めた。12号車のカラム・アイロットには2度のコースオフもあり、上位から脱落することとなった。
JOTAが序盤に2台のマシンでスティントを伸ばしたことについて、ヒグネットは次のように語っている。
「フリー走行と予選で、彼ら(ファクトリーポルシェ)にコンマ3〜4秒の差をつけられていることが分かっていたので、スティントを伸ばそうとしたんだ。残念ながら、レースではうまくいかなかった」
なお、38号車のジェンソン・バトンは、雨の中でワイパーがきちんと機能せず、フロントガラスがまともに見えなかったと明かした。
「30周を費やしてさまざまなことを調整したんだけど、何もうまくいかなかった」と2009年のF1チャンピオンは語った。
「1周あたり数秒をロスしていた。見えなくなったから、レースをやめようかなと思うところまでいったよ」
「その前にピットインしたとき、クルーはフロントウインドウを掃除してくれたが、トラックは次第に乾いていったので最後のスティントは少し楽だった。あの問題がなければ、ポイント圏内に充分入っていただろう。とはいえ、僕らのペースにはもう少し(改善の)努力が必要だ」
■イソッタ・フラスキーニのみ『ゼロ』
そんな苦境にも関わらず、JOTAの12号車はFIAワールドカップ・フォー・ハイパーカー・チームで53ポイントを獲得。AFコルセ83号車に1ポイントの差をつけ、首位に立っている
エドアルド・モルタラ、ダニール・クビアト、ミルコ・ボルトロッティのSC63が12位でフィニッシュしたものの、ランボルギーニはホームグラウンドで追加のマニュファクチャラーポイント1点を獲得することができた。
これは、彼らより前でゴールした2台のカスタマーカー(83号車フェラーリと38号車ポルシェ)は、マニュファクチャラーズ選手権でのポイント計算からは除外されるためである。
プジョーとキャデラックがイモラで今季初のマニュファクチャラーポイントを獲得したことにより、ハイパーカークラスに登録された9車種(メーカー)のうち、まだ得点を獲得していないのはイソッタ・フラスキーニだけとなった。
■観客数は昨年モンツァ超えの盛況
WECのオーガナイザーは、イモラの3日間の観客数が73,600人であったと発表した。これは昨年のモンツァ6時間レースの観客数65,000人を上回るものである。
MotoGPライダーのマルコ・ベッツェッキはイモラに来場し、バレンティーノ・ロッシのチームWRTのガレージからレースを見守った。
ベッツェッキは、WECピットレーンレポーターのブルース・ジュアニーによるレース中盤のインタビューにおいて、将来4輪のレースに挑戦することに興味を示している。
『もらい事故・修復・失格』の悲哀/バトンが悩んだ視界不良/0点は1メーカーetc.【WECイモラ決勝後Topics】
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