会見の始まる直前、ステージ上では角田裕毅(RB)が身振り手振りを交えて、何かを熱く語っていた。隣に座るジョージ・ラッセル(メルセデス)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が、笑顔を浮かべながらその話に耳を傾ける。現役ドライバーたちの和やかな関係性が垣間見える光景だった。

 現役唯一のモナコ人ドライバーであるルクレールは、まだ一度も母国グランプリを制することができずにいる。

Q:ポールポジションを2回獲っていますが、レースでの最高位は4位です。今週末はせめて表彰台を獲得したいのでは?
ルクレール:あまり意味はないね。2位や3位になっても、興奮できない。目指しているのは勝利だけだから。ここ数レースは、レッドブル、マクラーレン、そして僕たちが予選でかなり接近しているのを見てきた。モナコは、予選の重要性が他とは比べ物にならない。もしポールポジションを獲れたら、望んでいた結果を引き寄せられるかもしれないね。

Q:その可能性は、どれくらい?
ルクレール:モナコではいつも想定外のことが起きる。でも少なくとも、僕らがポール獲得の有力候補に入っていることは間違いないと思っているよ。

 ただしフェラーリは前戦エミリア・ロマーニャGPで、回生エネルギーのデプロイの問題により予選は4、5番手に沈んだ。

Q:モナコは、パワーサーキットではありません。しかしイモラでのエネルギー回生の問題を思うと、ここでも懸念事項になるのでは?
ルクレール:いや、特に心配していないよ。確かにイモラではその問題が起きたし、ジェッダも同様だった。でもそれはあくまで使い方の問題でね。短期的な変更ができないような、固定されたものじゃない。イモラではレッドブルとマクラーレンがいい方向に向かっていたけど、モナコはそこまで大きな違いが(パワーユニットで)生じるとは思ってない。

 対照的に、前戦イモラで苦戦を強いられたフェルスタッペンは、今週末のモナコに対してもあまり楽観視していない。

Q:イモラでは素晴らしい勝利を果たしましたが、必ずしもスムーズな週末ではありませんでした。今週末も、同様の問題が発生するのではないかかという懸念は?
フェルスタッペン:コースレイアウト的には、おそらくベストとはいえないだろう。僕たちのクルマはこのところ、段差や縁石を乗り越えるのに少し苦労しているからね。その弱点克服のために少しずつ取り組んでいて、去年に比べればほとんどのサーキットで、低速区間でのパフォーマンスは少し改善されたと思う。でもモナコは特別だ。たとえ最高のクルマを持っていても、モナコは決して簡単じゃない。すべてをうまく機能させ、タイヤをしっかり機能させるのが、とても難しいコースなんだ。そこに赤旗とかの不確定要素も絡んでくるしね。いつも多くの混乱がある。

Q:ルクレールはポール争いに加わることができると考えています。フェラーリとマクラーレンがあなたに接戦を挑んでくる可能性は?
フェルスタッペン:ここ数年、フェラーリはモナコでとても強かった。そしてマクラーレンは、直近2レースのパフォーマンスが大幅に向上している。さらに去年は、エステバン(・オコン/アルピーヌ)も予選で素晴らしい速さを見せた(注:4番グリッドを獲得)。自信たっぷりで、気分よく走れるドライバーが思いがけない結果を出す。それがモナコなんだ。

 コンスタントにポイントを獲得し続ける角田に対しては、海外メディアも来季の動向に注目している。

Q:ユウキ、あなたとRBとの契約は、今年末で切れます。あなた自身は、残留を望んでいますか。あるいは他の選択肢を検討していますか? 将来に関するニュースは、いつ聞けるのでしょう?
角田:今のチームにはとても満足しています。上位勢を相手に、時には7位や8位争いができていますからね。でももちろん、他の選択肢もあります。ただトップチームはほとんど塞がっています。なので現実的には、中団での最強チームの可能性を探ることになります。一方で僕はレッドブルドライバーだし、レッドブルを目指したい気持ちを当然持っています。でも彼らが僕を望んでいないのなら、そしてRB以上の魅力あるオファーがあったら……考える余地は十分にあります。今の僕があるのは、何よりもレッドブルとホンダのおかげです。なのでレッドブル以外の選択肢は、アストンマーティンということになります。でも少なくとも今の僕は、RBに満足しています。

 かなり率直に、今の心境を語っているように感じた角田のコメントだった。ところが彼自身は、これでもう出番はないと思ってしまったようだ。

 会見は終盤になり、話題はル・マン24時間レースに切り替わった。

Q:エステバン、F1が最優先なのはもちろんでしょうが、アルピーヌのスポーツカーもテストしてみたいですか?
オコン:今は適切な時期ではないと思うけど、いつかル・マンでレースする機会があれば、ぜひ運転してみたいね。

Q:ユウキは? ル・マンについては?
角田:え? ル・マン?

Q:そう、ル・マンです。
角田:すみません、質問を聞いていませんでした。 来年はル・マンに乗るかって?

Q:WECはフォローしていない? ル・マンでレースをしてみたくないですか?
角田:いつかは。……申し訳ない。完全に耳を閉じてました。他のドライバーに質問してください!
(一同笑)
フェルスタッペン:僕ならユウキを(ル・マンの)チームメイトに指名するね。とても軽いから、ぶっ飛んで行ける。僕の重さを補えるじゃないか!

 コース上のパフォーマンスへの評価だけでなく、角田はこんな天然なボケも仲間たちに愛されているようだ。