前歴9件、前科3件。それでも男は、また窃盗を犯しました。
書店でコミックを9冊万引きした、62歳の無職の男が法廷で語ったこととは。

常習累犯窃盗の罪に問われているのは、鳥取県米子市の無職の男(62)です。

起訴状などによりますと、男は2023年11月4日午後3時すぎ、鳥取県米子市内の書店で、コミック4冊(販売合計価格3168円)を窃盗し、翌日午後8時半にも、同じ書店でコミック5冊(販売合計価格3630円)を窃盗したとされています。

男には、前歴9件があり、2013年7月に常習累犯窃盗で懲役2年2か月に、2016年7月に常習累犯窃盗で懲役2年6か月に、2020年2月に常習累犯窃盗で懲役2年8か月にそれぞれ処せられています。

6月5日の初公判。
男は起訴内容をいずれも認めました。

「コミックの続きを読みたい」という身勝手な理由で、読みたいコミックを着衣の下に入れて、万引きしたといいます。

【弁護人からの質問】
Q令和4年9月に出所後、食費はどこから支払っていましたか?

ー自分の持っているお金からです。自分の預貯金、親のお金、給付金ももらっていました。

Q今回の犯行時、現金はいくら持っていましたか?

ー7万円、それに近い金額です。

Qどうして漫画にはお金を使いたくなかったんですか?

ー自分の中で、漫画は読み捨てる形というか…情報に価値があって読み返さないので、文庫本などに比べると高いと感じるからです。


男は出所後、就職活動がうまくいかなかったことなどから、将来お金に困ることなどを不安視し、漫画の購入にお金を使いたくなかったなどと述べました。

 

Q窃盗を繰り返してしまったことに反省していますか?

ーもちろん、反省もありますし、愚かなことをしていると思っています。
 変わらない自分にイライラすることもあります。

Qもう窃盗を二度とすることはありませんか?

ー出所後には、年金が手に入ると思うので、切羽詰まった感じが無くなり、心にゆとりができて、仕事もできると思います。

【検察官からの質問】
Q窃盗した11月4日当時、現金約7万円を持っていたということは、漫画を買おうと思えば買えたわけですよね?

ー漫画は読み捨てるというか、長い間自分のもとに置いておくものじゃない。金額と価値が見合っていないような感じ。

Q定価ではなく、中古、借りるなどの方法は思いつかなったのですか?

ー借りるのは思いつきませんでした。
 中古だと、自分の読みたいところが飛んだりするので…

Qどのように盗んだのか覚えていますか?

ー平置きされた本を手に取って、高いという気持ちがあったので、服の中に隠して店を去りました。

Qまた常習累犯窃盗で処罰されると思わなかったのですか?

ー頭のどこかで分かっていたんですが、今の生活と刑務所の生活のハードルが無くなってきた。

Q社会にいようが、刑務所にいようが一緒ということですか?

ー自分が社会に必要とされていないことに嫌気を起こして、精神的にもまいっていました。
人との付き合いもないし、会話もないし、自分の評価も下がってしまって、自分を大切にできなかったです。

Q出所後、社会復帰すれば、その状況は変わりますか?

ー年金も入ってきますし、出所後は「子ども食堂」や海岸清掃などのボランティア活動をしたいです。
ボランティアで自分が必要とされていると思えたら、精神も安定してくるんじゃないかと思います。

【論告求刑】

検察官は、自己中心的かつ身勝手な犯行で酌むべき点はないこと、手慣れた犯行で幾度も処罰されているのに再犯したこと、被告人が罪を認めていることなどから、懲役4年を求刑しました。

一方、弁護人は、被告人が窃盗を繰り返して生活を立てていたわけでなく、少しお金の余裕があれば罪は犯していなかったと主張。出所後の就職が困難など、社会の構造にも問題があり、酌むべき事情があるなどとして、寛大な処罰を求めました。

裁判官「最後に言っておきたいことはありますか?」

被告人「特にありません」

判決は、7月3日に言い渡されます。