最初から読むのと、最後から読むので話が真逆になる不思議な本が生まれました。オリジナル作品を撮影した1分54秒の短編動画がSNSで話題になっています。
それが『 夢追いかけて 』という作品です。紙工作作家・工作漫画家として知られる「しんらしんげ」( @shin___geki )さんが11月10日にX(旧Twitter)に投稿しました。

絵が動く仕掛けを施したノートを紙芝居のようにめくっていく内容です。

動画の内容は?

テレビでアイドルを見て、憧れを抱く少女。『夢追いかけて』の動画より(Twitter/shin___geki) / Via Twitter: @shin___geki

会場を満員にするアイドルの姿をテレビで見て憧れを抱く少女。成長してからオーディションを受けて、実際にアイドルになります。ワンマンライブを開催するも観客は途中で帰ってしまい閑散とした光景に。

ワンマンコンサート会場の閑散とした観衆。『夢追いかけて』の動画より(Twitter/shin___geki)

練習に励んだ後、再起を図るべく「今夜限りの特別ライブ」も観客はやはり少なく、こちらも失敗に終わります。

帰り際、かつての自分そっくりの小さな子からサインをせがまれ、色紙にサインをしながら涙を流すシーンで終わります。

アイドルとして挫折を味わったけど、次の世代のファンを残せた……。何だかほろ苦い話に見えますが、ここで動画は終わりません。

涙を流しながら色紙にサインするシーン。『夢追いかけて』の動画より(Twitter/shin___geki)

一旦、閉じられたノートが今度は逆に最後のページから順にめくられていきます。

少女にサインしたあと、観客の少ない「今夜限りの特別ライブ」に挑むアイドルの女性。練習に励んだ後に開いた、大きな会場でのライブでは、どんどん観客が集まってきました。

少女がテレビで見て目をかがやせています。テレビの中には、あのアイドルの女性が、会場を埋め尽くす観衆の向こうでポーズを取っていました。バッドエンドだったはずが、見事なハッピーエンドになったのです。

この動画に対して15日現在、約9万1000件の「いいね」が集まりました。次のような反響が出ています。
💬「これ凄すぎる!ノートの仕掛けもだけどストーリーがスゴい」
💬「悲しいお話かと思いきやからの回収が素晴らしかったー!」
💬「涙がなんか出てきた。素敵な終わり方」
💬「最後まで見ると鳥肌が止まらない」

実は2年越しのリベンジだった。作者との一問一答

BuzzFeed Japanでは作者の「しんらしんげ」さんに取材しました。実はこの作品、過去に投稿した「憧れのアイドル」という漫画を元に立体作品にした2年越しのリベンジだったそうです。前回があまりバズらなかったものの「動画の形で作れるんじゃないか」と構成を考え直したそうです。
――アイドルを目指す少女の話を題材にしようと思ったきっかけはなんでしょう?
2021年5月に「 憧れのアイドル 」という逆から読んでも物語が成立する漫画を自分が描きましてあまりバズらなかったことがあります。これをこの間見直して動画の形で作れるんじゃないかと思い、構成を考え直して制作しました。

――アイドルを題材にした漫画・アニメ作品である 【推しの子】 は意識しましたか?

前の漫画のときは【推しの子】のアニメは始まってなかったので意識はしてないです。

――最初のページから読むのと、最後のページから読むのでは真逆な展開になる構成が非常に面白かったです。この構成はどのようなところから思いついたのでしょう?

「 回文、ならぬ 回ポエム? 逆から読むと意味が変わる文章、ふたたび。 」のような、逆から読んでも成立する文章を見て、絵や漫画でもできるのではないかと思い、制作しました。

――作品を作る上で特に苦労したのは、どんな点ですか?

どちらの方からページを開いても物語が成立する形にするのが難しかったです。1つの絵でも2つの意味を持たせなければならず、辻褄があうようにするのが大変でした。構成を何度も練り直してようやく納得のいく形になりました。

――今回の投稿には9万件を超える「いいね」が集まっていますが、こうした反響をどう捉えていますか?

ノートの作品は「 へんがお 」や「 愛する日々 」など過去に何度かバズっているので、正直もうちょっと反応があるとは思ってました。それでも多くの反響が貰えたことは嬉しいです。また違った形の面白い作品を作れたらと思います。