市川市中山の玉田愛子さん(58)の愛犬「パル」は、3月に20歳になった雄のトイプードル。人間なら100歳ともいわれる高齢犬だ。その年になると、歩行できなくなり、寝たきりになる犬も少なくないのに、大きな耳を覆う毛を天使の羽根のようになびかせ、今日も散歩道を歩いている。年齢による衰えも出てきたが、元気な「ワンちゃん」なのである。

 「あら、かわいいね」。玉田さんがパルを連れて散歩に出ると、犬好きが駆け寄り声をかける。生来のかわいさと人なつこさが周囲を引きつける。

 玉田家に来たのは2004年5月、生後2カ月の時だった。苦しい手術を受けた10歳の長女のため「犬を飼おう」と自宅のある千葉市内のペットショップを訪ね、パルに出合った。

 「素直で元気はつらつ。公園に行くと、そこにいる犬1匹ずつにあいさつに行くような子だった」と玉田さん。10年前の市川市への転居後も「一家と近所のアイドル」であり続けた。一般社団法人ペットフード協会(東京)によると、犬の平均寿命は14・62歳。パルは15歳を過ぎても元気に走り回った。

 隣人で犬を飼う松田滋子さん(54)は「こんな高齢で元気なワンちゃんは見たことない」と驚く。

 年齢による衰えが忍び寄ってきたのは昨年から。白内障で目が見えなくなり、道の段差を越えられなくなってきた。食べる量が減り、1日2回の食事が少量ずつ朝昼晩の3食に。

 玉田さんは在宅高齢者を訪問するケアマネージャー。全国展開する法人勤務のケアマネだったが、家でパルに昼食を与えられる融通の利くフリーに転身。忙しくて夕方の散歩に戻れない時などは自営業の夫や千葉県内在住の娘が助けてくれる。

 夫妻は3月26日に20歳になったパルを祝い写真館で記念写真を撮った。パルは玉田さんが抱き、長女と神奈川県に住む長男も駆けつけた。「パルが視力を失ったときは寂しかったけどいつまでも悲しがっていられない。パルが頑張ってるし、私ももう少し頑張る」と玉田さん。

 ペットフード協会によると、ペット犬の長寿化は進み、要因には室内で飼うことにより事故や感染症が減ったこと、医療の進歩、年齢に応じた適切なドッグフードの開発などが挙げられるという。