色絵では初 人気の甲鉢 2万4000円 江戸時代後期に九谷焼吉田屋窯で生産された焼き物の販売値段が分かる古文書が見つかった。九谷焼窯跡展示館(加賀市山代温泉)の田嶋正和館長(68)によると、当時の九谷焼色絵作品の値段を示す資料が見つかったのは初めて。江戸後期にもその高い芸術性から高額で取引されていたことが明らかになった。(日暮大輔)

 吉田屋窯は1824年に始まり、装飾の美しい色絵作品が特徴の九谷焼を再興させたことで知られる。わずか7年で廃窯となったが、製品は江戸初期に作られた古九谷に次いで品質と芸術性が高く評価されている。

 古文書は田嶋館長が発見した。3月ごろ、小松市で開かれたオークションで、加賀市大聖寺地区にまつわる古文書を落札。びょうぶの下張りに使われていた物で、修復すると吉田屋窯から大聖寺の商人に宛てたとみられる覚書だと読み取れた。色絵作品25点の値段が記され、当時も人気だった甲鉢(かぶとばち)は一つ6匁。現代の価値でおよそ2万4千円という。

 これまで発見された吉田屋窯ゆかりの古文書「吉田屋文書」=市指定文化財=には土瓶などの陶器や素焼きなどの値段が分かる品が2点あったが、色絵作品について記された資料はなかった。田嶋館長は「九谷焼は当時から高級品。値段が分かることで研究にも役立つと期待できる」と話した。

 古文書は同展示館で常設展示される。